体が溶けて体液が床を汚し…「孤独死した人」は発見されるまで平均で何日かかる?

AI要約

独身や配偶者の死別によりおひとりさまで暮らす人が増えています。しかし、孤独死の実態は深刻であり、発見までに長い時間がかかることも珍しくありません。

孤独死した場合、遺体が腐敗し始めるまでの平均日数は18日で、夏場でも1~2日で腐敗が始まるため、その後の処理には遺族や周囲の人々が莫大な費用と時間を費やすことになります。

連絡を取り合う家族や友人がいない状況で孤独死が発生すると、誰も気づかずに孤独な状態で亡くなる可能性が高くなります。亡くなってしまった後に、その遺体による問題が起きるため、社会全体での関心や対策が求められています。

体が溶けて体液が床を汚し…「孤独死した人」は発見されるまで平均で何日かかる?

 独身を通してきた人をはじめ、配偶者と死別・離別した人など、世の中にはさまざまな事情で「おひとりさま」として暮らす人がいます。しかし一口におひとりさまと言っても、年齢を重ねた後も幸せに生きていける人と、不安やストレスにさいなまれながら生きていく人に分かれるのが現実です。両者を分ける「壁」の正体は何なのでしょうか。生前整理・遺品整理のプロ、山村秀炯(やまむら・しゅうけい)氏の書籍『老後ひとり暮らしの壁』から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「孤独死の実態」について。

● 孤独死の本当の問題

 とある「おひとりさま」の話をさせてください。

 その方は30代の男性で、独身で賃貸アパートの2階でひとり暮らしをしていました。

 まだ若いのですが肥満体質で、糖尿病と高血圧をわずらっていました。

 その病気が原因で自宅で亡くなったのですが、救急車を呼ぶこともなくひっそりと亡くなったので、誰にも気づかれないままに何週間も経過してしまいました。

 仕事はしていたのですが、どうやら毎日オフィスに出勤するような働き方ではなかったようで、連絡が取れなくなっても自宅まで訪ねる人がいなかったようなのです。

 普段からきちんと連絡するようなタイプでないと、特に若い男性の場合は、衝動的に旅に出るなんてこともあるだろうと、それほど心配もされません。

 人間は生物なので、亡くなってから数日でご遺体が腐り始めます。

 それが夏場だったりすると、何週間も経つうちに体が溶けて体液が床を汚します。虫が湧いて、ひどい悪臭を発します。

 最終的に下の階の天井に染みと臭いが出てきて、大家さんにクレームが入り、ご遺体が発見されました。

 こうして、大家さんから部屋を借りるときの保証人になっていた親族に連絡が入り、その親族から私のところに「遺品整理」のご依頼がありました。

 自宅での変死となると警察が来て捜査をするのでご遺体そのものを見ることはなかったのですが、体液による汚れと臭いと虫の群れは、私が訪問したときにも残っていました。

 再び人に貸せるように徹底的に臭いをなくしてほしいという大家さんの希望で、遺品整理と特殊清掃を行いました。体液が下の階にも浸食していたので、下の階の人には一時的に引っ越していただきました。

 床を広げると亡くなった場所から3メートルくらいの範囲まで体液が広がっており、広範囲に悪臭の元があって、すべて洗浄した後にコーティングをしていく作業を行いました。

 下の階も同様に天井を一部解体して、コンクリートの隙間から垂れていた目地のコーティングなどを行い、遺品整理と特殊清掃を合わせて費用は何十万円にものぼりました。

 いかがでしょうか。このように、おひとりさまの場合は、亡くなってから発見されるまでに時間がかかってしまうこともあります。常に連絡を取り合う家族や友人がいないと、なかなか気づいてもらえないのです。

 故人が仕事をしていれば職場の人が異変を察知したりします。それもなければ近隣住人が異臭に気づいたり、あるいは郵便受けにチラシや新聞が溢れかえっているのをきっかけに、管理人に発見されたりします。

 孤独死した方が発見されるまでの平均日数は、18日だそうです(一般社団法人日本少額短期保険協会孤独死対策委員会「第7回孤独死現状レポート」2022年)。

 遺体は夏場なら1~2日、冬場でも数日で腐敗が始まります。もし自分の遺体が腐敗してしまうとしたら、いい気分はしません。

 孤独死が「死の瞬間にひとりである」こととするなら、ある程度は仕方のないことだと思います。