天皇陛下と皇后雅子さま、首相を乗せる「政府専用機」 仏料理メニューに「急な」運航依頼も…元機長がインドで「驚いた」出来事とは?

AI要約

天皇、皇后両陛下が政府専用機で英国を訪問した際の様子や政府専用機の特徴について紹介。

政府専用機の機内食や運用方法についての詳細。

政府専用機の予定や運航に関する興味深い事実。

天皇陛下と皇后雅子さま、首相を乗せる「政府専用機」 仏料理メニューに「急な」運航依頼も…元機長がインドで「驚いた」出来事とは?

 天皇、皇后両陛下は6月末、国賓として招かれた英国を「政府専用機」で訪れた。「空飛ぶ官邸」として首相の外遊に使われ、「VIP専用」のイメージがある航空機だが、通常の民間機とはどんな違いがあるのか。食事のメニューから“特殊事情”まで、政府専用機のパイロットらに聞いてみた。

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 6月22日午後6時(現地時間)ごろ、天皇、皇后両陛下を乗せた政府専用機が、英国・ロンドン郊外のスタンステッド空港に到着。タラップからゆっくりと降りたおふたりは、出迎えたチャールズ国王の側近らと握手を交わした。

 おふたりが乗っていた航空機は、ボーイング社の「B777-300ER」。全日空や日本航空の国際線などで使われている機体で、全長は約73メートル、約150人が搭乗可能だ。

 しかし、全日空や日本航空のマークはなく、日の丸の国旗が掲げられている。この航空機が、防衛省が管理し、航空自衛隊の特別航空輸送隊が運用している「政府専用機」だ。

 

 政府専用機は、内閣総理大臣や各省庁の大臣、天皇陛下や皇族らが、公務のために海外を訪問する際に使われる航空機だ。

 航空自衛隊によると、皇室では天皇、皇后両陛下や皇太子ご夫妻、皇嗣ご夫妻以外の皇族が使ったことはほとんどなく、1999年にモロッコのハッサン2世の葬儀のために高円宮憲仁さまが搭乗されたときだけだという。

 

 30年ほど前までは民間機をチャーターしていたが、緊急時などの対応が難しいため、政府は1993年から2機の特別輸送機を政府専用機として導入した。

 故障などのトラブルに備えて、2機が同時に飛ぶのが原則だ。最近では、2021年に菅義偉首相(当時)がG7サミットのために英国へ向かおうとした際、羽田空港で機内の照明に不具合が見つかり、予備機に乗り換えている。

 

■食事のメニューは?

 政府専用機は通常、北海道にある航空自衛隊の千歳基地(千歳市)に置かれている。

 航空幕僚監部で、政府専用機などの運航を調整・支援する運用支援・情報部運用支援課に所属する永野雄三さん(48)は、政府専用機の機長経験もある。永野さんによると、パイロットはもちろん、機内サービスを担当する客室乗務員もすべて、北海道・千歳基地の特別航空輸送隊に所属している航空自衛官だ。

 パイロットは、輸送機のパイロット経験者を基準に選ばれる。そして異動が決まると、民間航空会社で数カ月の研修を受けて、機長や副操縦士の資格を取得することになるという。

 

 機内で天皇陛下に出される食事は、栃木県の御料牧場から運ばれたもの――そんな噂がささやかれたこともあったが、食事は民間機と同じケータリングサービスを利用している。

 VIPの食事は民間機のファーストクラスと同程度のもので、日本料理やフランス料理などが一品ずつ、皿に盛り付けされて提供される。VIP以外の搭乗者の食事は、民間機のビジネスクラスと同程度のメニューだという。

 

 機内には、総理や天皇や皇族が使う部屋や会議室、事務作業室があり、旧型機では同行記者の取材に答える記者会見のスペースなどもあった。機内の詳しい情報はセキュリティ確保のために一部をのぞき、非公開とされている。

 

■政府専用機の「依頼」は突然に

 政府専用機は民間機と異なり、定期的な運航のスケジュールはない。内閣官房や宮内庁から防衛省が「依頼」を受け、運航の予定が定まっていくのが基本だ。

 たとえば皇室メンバーの海外訪問は、数年前から調整が始まり、相手国から「招待状」が届く。ある程度の予定は見えているが、正式決定されて「依頼」が来るのは日程の直前になることも多い。

 天皇、皇后両陛下の英国訪問は6月22日からだったが、政府の閣議決定を経て、正式に訪英が決まった6月4日以降に「依頼」が届くことになったという。