手当不正受給、パワハラ…統制不全が露呈 防衛力強化に冷水

AI要約

海上自衛隊内で不正潜水手当や不正飲食問題が発覚し、計96人が処分される中、内部部局でもパワハラが存在し、幹部3人が処分された。防衛省・自衛隊全体で統制不全や規範意識の低さが露呈した。

潜水手当不正受給では、架空の訓練で約200万円を得た隊員もおり、不正は潜水員長が主導し、多くの隊員が黙認していた。

内部部局のパワハラも発覚し、特別防衛監察の結果、停職処分を受けた幹部が威圧的な行動を取っていた。ハラスメントは自衛隊員の士気を下げ、部隊の精強性に影響を与える。

手当不正受給、パワハラ…統制不全が露呈 防衛力強化に冷水

海上自衛隊は、潜水手当の不正受給や基地内での不正飲食でも計96人が処分された。一方、政策立案や法案作成を担う「背広組」が中心の内部部局でも幹部3人がパワハラで懲戒処分となった。国防を担う組織として厳正な規律の順守が求められる防衛省・自衛隊全体で統制不全や規範意識の低さが露呈した。

潜水手当の不正受給は、訓練の実施を偽ったり、時間や深さを水増ししたりしていた。1500時間を超える架空の訓練で、約200万円を受給した隊員もいた。不正は、階級が曹、士で訓練を計画する「潜水員長」が主導し、多くの隊員が黙認していた。

不正飲食では、3等海佐(当時)2人が部下の不正を認識しながら見逃した上、自らも代金を払わず不正に食事していた。海自では潜水艦修理契約に絡み、乗員が川崎重工業から金品などを受け取っていた問題も浮上している。

内部部局のパワハラは、元自衛官の五ノ井里奈さんが性被害を訴えたのを機に、令和4年9月に特別防衛監察を開始して以降、「ハラスメントを一切許容しない組織」を目指し、取り組みを進める中で発覚した。

停職9日となった50代幹部は、上司の度重なる指導に従わず、深夜、休日を問わず担当課職員に必要以上のやり取りを強いた。「役人のイロハができていない」などと叱責するなど、威圧的な言動を繰り返していた。

防衛省によると内部部局でのハラスメントの懲戒処分は、前身の防衛庁時代も含めて今回が初めて。ハラスメントは自衛隊員の士気を下げ、ひいては部隊の精強性を損なうことにつながる。

安全保障環境が厳しさを増す中、政府は4年末に策定した「安保3文書」で防衛力を抜本的に強化するため、9年度までの5年間で計43兆円程度の予算規模を確保する方針を掲げた。防衛費増額のために増税も予定されるが、組織全体で相次ぐ不祥事に国民からは厳しい視線が注がれる。

防衛省幹部は「今回負った傷は深い。失った信頼を取り戻すため愚直にやるしかない」と話す。(小沢慶太)