恣意的な定年延長「裁判所も認めた」 原告の教授が語る判決の意義

AI要約

大阪地裁は、40年にわたる法解釈を変更して検察官の定年延長を認めた裁判で国の主張を退けた。

学者側は裁判を勝利とし、国に文書の早急な公開を求めた。

裁判は特定の検察官のために法解釈が変更されたかどうかが争点となり、国の動機に疑念が生じている。

恣意的な定年延長「裁判所も認めた」 原告の教授が語る判決の意義

 約40年続いた法解釈を突然変え、ある検察官の定年を延長した。経緯に迫ろうと一人の学者が情報公開を求めた裁判で、27日の大阪地裁判決は、「解釈変更は特定の検察官のためではない」とする国の主張を一蹴した。学者側は判決を評価し、早急に文書を出すよう国に求めた。

■「画期的な判決だ」

 「(黒川弘務氏の)定年延長の目的を明らかにすることがこの裁判の一番の目的。100%に近い勝訴だと思っている」

 国を相手に数々の情報公開請求訴訟を闘い、自民党派閥の裏金問題を明るみに出した原告の上脇博之(ひろし)・神戸学院大学教授は判決後、大阪市内で開いた記者会見で満面の笑みを見せた。

 上脇教授は「政府が特定の人物のために法解釈を変えるという、恣意(しい)的で許されないことをやったのだと認めた画期的な判決だ」と評価した。

 その上で「なぜ政権はそこまでして黒川さんを頼ったのか。検察捜査への介入があったのではという疑念も生まれる。国民にも説明が必要で、国会で改めて議論されるべきだ」と訴えた。

■黒川氏の定年迫る中、変えられた法解釈

 国家公務員法の延長規定が検察官に適用されないという解釈は、1981年から維持されてきた。だが当時の安倍晋三政権が東京高検の検事長だった黒川氏の定年が迫る中、法解釈を変え、初めて検察官に適用した。

 原告側代理人の徳井義幸弁護士は、安倍政権時代に浮上した「森友・加計学園」や「桜を見る会」などの疑惑に触れ、「(捜査機関による)政権への忖度(そんたく)が蔓延(まんえん)しているという批判があり、今回の問題はその一環だった。黒川さんのために定年延長をしたことを裁判所もはっきりと認めたのは大きな意味がある」と説明した。

 今回の情報公開請求訴訟は、「定年延長が黒川氏のためのものか」という文書の作成目的が争われた。上脇教授は「文書の目的が争われたのは全国でも初めてではないか」と指摘。原告側代理人の谷真介弁護士も「情報公開訴訟の新たな地平を切り開いた」と語った。

 今後、国が控訴せず判決が確定すれば、国は改めて法解釈変更の経緯に関する文書の開示について判断する。上脇教授は「控訴しても国が勝てる見込みはない。開示決定をしてもらいたい」と話した。(山本逸生、大滝哲彰)