静岡県がJR東海と「空港新駅」の対話へ…中身のない「いい加減な計画」になる最悪の予想

AI要約

静岡県政にとって長年の懸案事項、東海道新幹線の「静岡空港新駅」設置について、JR東海が対話のテーブルにつくことを了解した。

静岡空港新駅をリニア問題に関わる「静岡県のメリット」に位置づけた鈴木康友知事は就任の会見で、「静岡空港新駅の設置を長期的な課題として取り組む。じっくりと議論を進めたい」などと述べた。

リニア問題の早期解決を望む丹羽俊介JR東海社長は静岡県庁を訪れ、知事就任後、初めて鈴木知事に面会した。

川勝平太知事時代と違い、リニア問題と静岡空港新駅を直接的につなげたことで、JR東海の対応が大きく変わった。

東海道新幹線の事業者であるJR東海が対話を拒否し続けた静岡空港新駅がリニア問題のもう1つの大きな焦点となるわけだ。

もともと嘘とごまかしを続けて無理やり開港させた静岡空港である。静岡県の理屈だけで、空港新駅の設置などできるはずもない。

静岡空港の「黒歴史」をたどる。静岡県のほぼ中央、広大な茶畑が続く牧之原台地の東端にある静岡空港(島田市、牧之原市)は、何度も開港延期を繰り返して2009年6月4日に暫定開港した。1987年12月、空港予定地を牧之原台地と決定して以来、貴重な自然環境の破壊だけでなく、東京、大阪を結ぶドル箱路線を持たない空港の大赤字は必至であり、むだな公共事業の典型、「無用の長物」などの激しい反対運動が起きた。

静岡県がJR東海と「空港新駅」の対話へ…中身のない「いい加減な計画」になる最悪の予想

 静岡県政にとって長年の懸案事項、東海道新幹線の「静岡空港新駅」設置について、JR東海が対話のテーブルにつくことを了解した。

 静岡空港新駅をリニア問題に関わる「静岡県のメリット」に位置づけた鈴木康友知事は就任の会見で、「静岡空港新駅の設置を長期的な課題として取り組む。じっくりと議論を進めたい」などと述べた。

 川勝平太知事時代と違い、リニア問題と静岡空港新駅を直接的につなげたことで、JR東海の対応が大きく変わった。

 リニア問題の早期解決を望む丹羽俊介JR東海社長は6月5日、静岡県庁を訪れ、知事就任後、初めて鈴木知事に面会した。

 両者の懇談は非公開で約30分行われた。

 懇談のあと、丹羽社長は「課題はいろいろあるが、静岡県から話があれば(静岡空港新駅設置で)対話していく」と話した。

 前社長時代には、JR東海は「静岡空港新駅」を頭から否定して、聞く耳さえ持たなかった。

 今回、丹羽社長の方針転換で、静岡県、JR東海の事務方による「対話」が始まることになった。

 東海道新幹線の事業者であるJR東海が対話を拒否し続けた静岡空港新駅がリニア問題のもう1つの大きな焦点となるわけだ。

 と言っても、JR東海の否定的な姿勢が変わるわけではない。

 ただせっかく「対話」をするのであれば、空港新駅を「長期的な課題」(鈴木知事)と先送りしないほうがいいだろう。

 JR東海の指摘するいろいろな課題に耳を傾けて、早い時点で空港新駅設置の可能性が本当にあるのかを判断した上で、はっきりと県民に伝えるべきである。

 もともと嘘とごまかしを続けて無理やり開港させた静岡空港である。静岡県の理屈だけで、空港新駅の設置などできるはずもない。

 川勝知事ら歴代知事が唱えた空港新駅の計画が正しかったのかどうか見極める絶好の機会である。

 静岡空港の「黒歴史」をたどる。

 静岡県のほぼ中央、広大な茶畑が続く牧之原台地の東端にある静岡空港(島田市、牧之原市)は、何度も開港延期を繰り返して2009年6月4日に暫定開港した。

 1987年12月、空港予定地を牧之原台地と決定して以来、貴重な自然環境の破壊だけでなく、東京、大阪を結ぶドル箱路線を持たない空港の大赤字は必至であり、むだな公共事業の典型、「無用の長物」などの激しい反対運動が起きた。

 静岡県の計画では、タイ、インドネシアなど東南アジア各国と結び、年間160万~170万人の需要予測を立てた。その目標達成のために日本初の空港直下の「新幹線地下駅」を掲げた。

 ただ当初からJR東海は新駅設置を不可能と否定していた。

 2001年6月、空港反対派は建設の是非を問う住民投票条例案を27万人の署名とともに直接請求した。

 県民の多くが空港建設に反対だったため、石川嘉延知事(当時)は住民投票条例案に「賛成」の附帯意見をつけて県議会に委ねた。

 住民投票条例案「賛成」は、7月に行われる県知事選の争点から空港建設問題を外すための姑息なまやかしであり、その結果、石川知事は圧勝した。

 その後、県議会は、住民投票条例案を否決、当然、石川知事の条例案賛成は宙に浮いたまま、空港建設は推進されることになった。

 その後、2度の開港延期を繰り返したあと、石川知事は2009年3月の空港開港を公約とした。空港建設反対の地権者には土地の強制収用手続きを行い、すべて問題は解決できたと思い込んでいた。

 ところが、静岡県のずさんな測量で、空港計画地周辺3カ所の立ち木約150本が航空機の就航に支障があることが判明した。

 静岡県は1年以上前から立ち木が航空法に触れるとわかっていたが、その情報を隠し続け、地滑り対策を名目に立ち木を除去しようとした。

 立ち木伐採に反対した所有者は「静岡県は空港建設で嘘とごまかしを重ねてきた。知事はこれまでも他の問題で現場に泥をかぶせてきた。組織のトップとして政治責任を取れ」と強硬な姿勢を崩さなかった。

 5期目を目指していた石川知事は立ち木所有者と面会後、県議会に辞表を提出した。立ち木所有者は知事との約束を守り、立ち木を伐採、これで何とか6月4日の暫定開港にこぎつけたのだ。

 立ち木所有者の主張した通り、嘘とごまかしを重ねて、静岡空港はようやく開港された。

 石川知事が県民に約束した需要目標は半分以下にも満たない惨憺たる状況となり、静岡県政史上最大の約1900億円もの公共事業は‟大失敗”の評価がいまも続く。

 それもあって、静岡空港ターミナル直下の新駅への期待だけは高まった。

 石川知事のあとを受けた川勝知事が、2010年7月の第5回中央新幹線小委員会にリニア沿線自治体の知事として出席した。

 川勝知事は「静岡県としては、沿線地域として南アルプス地域での地質調査など積極的に協力する」などとリニア建設に協力する姿勢を見せた。

 その前段として、「静岡空港新駅」設置の有望性を説明した上で、「中央新幹線の整備計画とともに東海道新幹線の新駅設置を明確化していただきたい」と迫り、「東海道新幹線の新しい運用形態を生かした陸・海・空の結節によるモデル。静岡空港新駅設置がその重要な突破口となる」と締めくくった。

 空港新駅が起死回生策となることに川勝知事は自信を持っていたのだろう。

 事業費を問われると、「待避線を前提にした場合、450億円ぐらい、待避線のない形でほぼ250億円と試算している。受益者負担であることを想定して、新駅の必要性を訴えている」などと述べ、地元負担による請願駅であることも明らかにした。

 この結果、小委員会の最終答申には、リニア計画によって「東海道新幹線新駅の可能性も生じ、利用者の利便性向上及び東海道新幹線沿線地域の活性化に寄与する」が盛り込まれた。