東京の高い生活費、晩婚化と育児の壁に…全国から若者流入しても衝撃の出生率「0・99」

AI要約

東京都で都知事選が行われる中、卵子凍結や少子化対策の課題が浮かび上がる。

自由診療の卵子凍結が増えており、都が関連施策を展開していることが明らかになった。

合計特殊出生率の低下による人口減少を受け、都幹部は対策の重要性を強調している。

 首都・東京のリーダーを選ぶ都知事選は7月7日の投開票に向け、熱い論戦が交わされている。国内最大の都市に山積する課題を現場からリポートする。

 「将来を考えると時間が刻々と過ぎることに焦っていた」。東京都三鷹市の会社員女性(38)は昨年1月、都内のクリニックで、卵子を採取し、凍結保存した。

 女性は不妊治療や流産を経験し、30歳で念願の第1子を出産した。その後、離婚してシングルマザーに。新しいパートナーとの子どもがほしいと思うが、勤務先で担当業務を任せられる同僚が見当たらず、「いまは産むタイミングではない」と凍結を決断した。

 保険が適用されない自由診療のため、採卵には約50万円かかった。さらに月約1万円の凍結保管料を支払っており、女性は「卵子を保管しなくても、出産・育児と仕事の両立がしやすい社会になってほしい」とため息をつく。

 卵子の凍結保管事業を手がける「グレイスグループ」では、30歳代後半の女性会社員の利用が半数以上を占める。昨年の凍結件数は前年の2・5倍に増えたといい、担当者は「関心は年々高まっている」と話す。卵子凍結費用を1人最大30万円助成する都の事業も反響が多く、23年度の申請件数は1467件と想定の7倍を超え、24年度は2000件の申請を見込んでいる。

 婚活のマッチングアプリの開発、第2子以降の保育料無償化、18歳以下に月5000円を支給する「018(ゼロイチハチ)サポート」――。都は結婚から出産、子育てまで切れ目のない少子化対策を打ち出してきた。

 それだけに、今月5日、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」が23年に東京都で「0・99」になったと厚生労働省が発表した際は、都庁に衝撃が走った。人口の維持に必要な出生率は2・07。地方から人の流入が多い東京都でも、30年をピークに人口が減少に転じるとされる。ある都幹部は「地道に対策をとるほかない」と唇をかむ。