「コメ兵」創業者三男 土産店始めた60歳からの人生「一番楽しい」

AI要約

名古屋市中区の大須商店街にあるお土産物店「大須おみやげカンパニー」の店主、石原基次さん。多様な土産物やご当地グッズを扱い、地元の魅力を伝え続けている。

石原さんは大須で生まれ育ち、街の移り変わりを目にしてきた。若い頃は家を飛び出して各地で働き、旅を終えた後に故郷に戻る。

大須大道町人祭で裏方として活動し、大須の活気と仲間との絆に触れる。商店街公認ボランティアとして観光客に親しまれる土産物店を立ち上げる。

■お土産カンパニー店主の石原基次さん 71歳

 神社仏閣からメイド喫茶、バンドスタジオまで多種多様な店が軒を連ねる名古屋市中区の大須商店街の一角。大須観音近くの土産物店「大須おみやげカンパニー」には、オリジナルTシャツや名古屋めし、ご当地限定グッズなど目を引く土産物が商店街のように所狭しと並んでいる。大須で生まれ育って70年。「ごった煮の街の魅力を伝え続けたい」と笑顔で客を迎えている。

 大須の古着店から始まった中古品流通大手「コメ兵」の創業者の三男で、街の移り変わりを見て育った。映画館や劇場が立ち並ぶ活気のあった街は、1960年頃から栄地区や名古屋駅周辺が開発され始めると人通りが減っていった。寂れていく街を横目に、高校卒業と同時に家を飛び出した。

 岩手県の牧場に住み込みで働いたり、北海道の襟裳岬で昆布漁を手伝ったりした。広大な自然を感じる一方、大須の「来るもの拒まず、誰でも温かく受け入れる街」という良さも認識できるようになった。故郷が恋しくなった23歳で旅を終え、実家に戻った。

 78年秋に開催されたイベント「大須大道町人祭」をきっかけに街に人が戻り始めた。イベントは全国の大道芸人が参加し、街のあちらこちらで芸を披露するもので2日間で約50万人が訪れた。

 にぎわう雰囲気に「こんなに人が多く、熱気のある大須は初めて」と感動し、翌年の2回目から裏方として参加。7回目には実行委員長も務めた。大須を愛する仲間との絆ができた。

 「100年以上続く老舗店があり、流行に乗った人気店もあるのにもったいない」

 ファイナンシャルプランナーとして働きながら、大須の名所などを紹介する商店街公認ボランティア「大須案内人」として活動。観光客の「土産を買う場所がない」との声を多く耳にしたことをきっかけに、企画会社「大須おみやげカンパニー」を設立した。イベントでつながりができた商店主らの店先に「大須みやげ」と書いた赤いのぼりを立てることに加え、「大須魂」と印刷したTシャツや赤いふんどし、はっぴ形の箸置きなどを開発。2015年には、商店街の仲間の勧めもあり、直営店をオープンした。