名門アニメ制作会社「ガイナックス」破産の真相 「庵野秀明」と「エヴァンゲリオン」がもたらした“光と闇”とは

AI要約

アニメ制作会社ガイナックスが破産した背景には、単純な経営悪化だけでなく、異なる事情が潜んでいた。

ガイナックスは創立当初から自由闊達な社風で知られ、多くの人気作品を生み出し、アニメ業界に革新をもたらしてきた。

しかし、ヒット作を手掛けたクリエイターが次々と退社し、事業多角化や経営陣のモラルハザードが問題となり、経営が行き詰まった。

名門アニメ制作会社「ガイナックス」破産の真相 「庵野秀明」と「エヴァンゲリオン」がもたらした“光と闇”とは

 評論家の岡田斗司夫氏や映画監督の庵野秀明氏らによって設立され、大ヒットアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」などの作品で知られるアニメ制作会社「ガイナックス」。そんな名門スタジオがわずか「3.8憶円」の負債額で破産したことに驚きが広がっている。実は経営悪化の背景に、巷間伝えられる「放漫経営のツケ」だけでは片づけられない“複雑な事情”が潜んでいるという。

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 1984年に設立されたガイナックスは「エヴァンゲリオン」のほか、「トップをねらえ!」や「ふしぎの海のナディア」などの人気作品を世に送り出し、独立系のスタジオとして常に“異彩”を放ってきたという。

「いまで言う“学生ベンチャー”のような形で立ち上げられ、『自分たちの好きなモノをつくる』といった自由闊達な社風で知られた会社でした。大手系列に属さず、単純に“クリエイティブ”で勝負するガイナックスは、日本のアニメやオタク文化の象徴的存在でもありました」(大手アニメスタジオ関係者)

 しかし5月末、東京地裁に破産を申請。直接のキッカケはその直前、債務の返済を求めて債権回収会社から債権請求訴訟を起こされたことだった。

「2010年には過去最高となる35億円超の売上を記録しましたが、今回、同社を破産へと追い詰めた負債額は約3億8000万円。その程度の資金すら捻出できないほど、経営状態はジリ貧に陥っていた。5年前には新しく代表取締役に就いた人物が未成年者への性加害容疑で逮捕されるなど、近年はトラブル続きで、本業であるアニメ制作事業は長く“開店休業”状態にあったと伝えられます」(全国紙経済部記者)

 ガイナックスによる最大のヒット作が、95年にテレビ放送が始まった「新世紀エヴァンゲリオン」だ。社会現象を巻き起こし、アニメ史に残る金字塔を打ち立てたが、監督を務めた庵野秀明氏は06年にアニメ制作会社「カラー」を設立し、翌07年にガイナックスを退社。以降は株主として同社の経営立て直しに関わってきた。

「庵野さんにとってガイナックスは“青春時代”そのもの。だからカラーによる融資など金銭的援助も行ってきましたが、結局、“焼け石に水”に終わった。退社に際し、庵野さんだけでなく、彼と一緒にやっていた“チーム”が揃って辞め、その後、エヴァの商標や版権などもカラーに譲渡されました。確かにエヴァの大ヒットでガイナックスは一時的にバブルに沸きましたが、庵野さんらが抜けたことで、アニメ制作以外に活路を見いだそうとしたのが迷走の始まりでした」(前出・大手スタジオ関係者)

 飲食店経営をはじめ、“畑違い”の慣れない分野にいろいろと手を出したものの、次々と失敗。また当時の経営陣による個人的な無担保貸付などモラルハザードも横行したという。

「ガイナックスの転落を庵野さんらの退社に求める声もありますが、実は07年にテレビアニメ『天元突破グレンラガン』というヒット作を世に放っている。ところがグレンラガンで監督を務めた今石洋之氏らが11年、アニメ制作会社『TRIGGER』を立ち上げ退社。庵野さんだけでなく、その後も優秀なクリエイターの“人材流出”が止まらなかったのは痛かった。それでますます、本業以外での稼ぎ口を探さざるを得なくなったと聞いています」(同)