元衆院議員の肩書悪用か 弁護士法違反の今野智博容疑者ら、特殊詐欺グループ関与の可能性

AI要約

元衆院議員で弁護士の今野智博容疑者が弁護士法違反の疑いで逮捕された。詐欺被害者を対象に法律事務を行い、着手金を受け取っていたが、実際に被害者に返還されることはほぼなかった。

今野容疑者は政治家を目指しており、自民党公募で衆院議員に選ばれたが、再選を果たせず、弁護士としての活動を続けていた。

捜査2課は今野容疑者を含む10人が特殊詐欺グループや「匿名・流動型犯罪グループ」に関与している可能性もあるとし、捜査を進めている。

詐欺の被害金を回収するとうたい、無資格者に法律事務を行わせたなどとして、警視庁捜査2課は弁護士法違反の疑いで、元衆院議員で弁護士の今野智博容疑者(48)=埼玉県深谷市=を逮捕した。無資格で法律事務をしたとして仲間の男女10人も逮捕。捜査2課は令和5年9月~6年3月、23都府県の20~70代の男女約900人から計約5億円を着手金として受け取ったとみて調べている。

■被害者への返還はほぼなく

捜査2課によると、今野容疑者らは、特殊詐欺やSNS型投資詐欺、ロマンス詐欺の被害者を対象に、被害金回復に向けて犯人グループの口座凍結依頼を受け付けるなどの法律業務を行っていたという。

「今野法律事務所」と題したホームページ(HP)を運営。「詐欺被害の返金なら弁護士にお任せください」などと記載し、問い合わせ先は東京都内にあったアジトにつながるようになっていた。被害者側には今野容疑者が元衆院議員だと伝えており、信用を得るために肩書を悪用していたとみられる。

相談者の大部分は詐欺被害者だったが、実際に返還された例はほぼなかったとみられる。着手金として受け取ったうち1割を今野容疑者が受け取り、残りを仲間で分配していた。

今野容疑者の逮捕容疑は5年12月~6年1月ごろ、男女10人が詐欺被害者5人から法律業務を請け負い、着手金として計約280万円を受け取る際、弁護士としての自身の名義を貸したとしている。捜査2課は認否を明らかにしていない。

捜査2課は、10人の背後には、特殊詐欺グループや「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が関与している可能性もあるとみて捜査を進めている。

弁護士資格のない者が報酬目的で法律事務を行うことは「非弁行為」として禁止されている。

■政治家の夢実現も3選かなわず

弁護士法違反で逮捕された今野容疑者。関係者によると、幼少のころから政治家を目指していたという。大学は早稲田大学政治経済学部に進学した。ただ、家庭の事情で大学院への進学は断念し、弁護士になるため司法試験合格を目指したという。平成15年に司法試験に合格し、17年から弁護士として活動を始めた。

政治家としての道を歩み始めたのは22年。衆院埼玉11区で自民党が行った候補者の公募で選ばれ、支部長に着任し、24年の衆院選に出馬した。選挙区では無所属で出馬した小泉龍司議員に敗れたが、比例北関東ブロックで復活して初当選した。