性別に基づく「アンコンシャス・バイアス」解消へ、教育現場で取り組み広がる

AI要約
男女平等教育を推進する取り組みが広がっている。東京都の中学校では性別に基づく呼び方や区別を廃止し、性差を気にせず行事を実施。社会での性別固定観念が子供の進路選択に影響を与えている現状。性別による仕事の向き不向きや職業選択についての調査結果も示唆に富む。

 男性は力仕事、女性は保育園の先生――。そんな思い込みで子供たちが将来の進路を狭めてしまわないよう、教育現場で、性別に基づいた「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を解消する取り組みが広がっている。(岡本立)

 「開会の言葉、桜井さん」。東京都新宿区の区立西新宿中学校で5月13日に行われた運動会の全校練習。司会役の女子生徒がアナウンスすると、1人の男子生徒が壇上に上がった。

 同校では、男子は「くん」、女子は「さん」を付けていた生徒の呼び方を2022年度から男女ともに「さん」で統一した。朝礼は男女別に背の低い順で整列していたが、男女混合の名前順に変更。生徒が所属する各委員会もクラスから男女1人ずつ委員を選んでいたのをやめ、同性の2人が委員になることを認めた。翌23年度からは、男子は青、女子は赤だったトイレの表示板の色を男女ともにモスグリーンにした。

 この日の運動会の練習でも、男女の別なく整列し、男女ペアで行っていた選手宣誓を女子2人で行った。3年の女子生徒(14)は「男女の境界線をあまり感じず、学校全体で団結力がある」と性差を気にしていない様子。早川隆之校長は「取り組みを始めてから、学校は一般社会よりも性差にこだわり過ぎていたのではと感じた。教職員の意識も変えないといけない」と語った。

 「女の子は優しく、男の子は強くあるべきだ」「夫は外で働き、妻は家庭を守る」――。社会で根強い性別による固定的な価値観は、女性の社会進出や男性の家事参加を妨げ、子供の進路の選択肢をも狭めていると考えられている。

 東京都が昨年9月、都立高1、2年を対象に行った調査(有効回答1万763人)では、生徒の66・2%が「性別で仕事の向き不向きがある」と回答。男子は理系科目、女子は文系科目といった「性別で教科の得意・不得意がある」と答えた割合は39・4%だった。

 また、男子は「女性らしいと思う仕事」、女子は「男性らしいと思う仕事」を、将来就きたい職業に選ばない傾向も明らかになった。特に女子の傾向が顕著で、「男性らしいと思う仕事」のトップ3だった「建築・土木」「治安維持など」「トラック運送業など」は、将来就きたい職業で下位だった。