小池都知事の公約“東京ドクターヘリ”キャンセル率8割の異常事態「このままでは救える命も救えなくなる」

AI要約

小池都知事が公約した東京都のドクターヘリ事業が、運用開始後に異常なキャンセル率約8割を記録していることが判明。

ドクターヘリ事業の背景や現状、問題点が浮かび上がり、医療関係者から危機感が広がっている。

東京都の異常なキャンセル率に関する詳細な調査結果や関係者のコメント、今後の展望などが明らかになる。

小池都知事の公約“東京ドクターヘリ”キャンセル率8割の異常事態「このままでは救える命も救えなくなる」

 小池百合子都知事が2020年の再選時に公約に掲げ、2022年3月から運用が開始された東京都のドクターヘリ。そのドクターヘリ事業において、キャンセル率が約8割という異常事態に陥っていることがジャーナリストの赤石晋一郎氏の取材で分かった。

「誰もが、どんな時にでも、症状に応じた適切な医療を迅速に受けられる体制作りというのが救急医療の基本です。ドクターヘリの運用を開始することで、さらに都民の医療支援を拡充させていきたい!」

 2022年3月30日、杏林大学医学部付属病院で開かれた東京都ドクターヘリ就航式。主賓として登壇した小池都知事は高揚した様子でこう語った。

 ドクターヘリとは、医師や看護師を乗せて傷病者のもとへ向かう救急医療用ヘリコプターのことである。

 小池都知事は2020年の2度目の出馬の際に政策集「東京大改革2・0」を発表。そのなかで、街づくりの一環として「ドクターヘリの強化」を明記したのだ。

「かねてからドクターヘリ事業については都議会公明党が推進を働きかけてきました。小池氏は2期目の出馬に際し、公明党案を丸呑みし、自らの肝煎り政策として掲げるようになった。都のドクターヘリ事業は、杏林大学医学部付属病院が医師・看護師を派遣する『基地病院』となり、ヘリの運航は入札の結果、学校法人ヒラタ学園に委託された。現在は多摩地区などの西東京エリアのみで運航されています」(都政関係者)

 ドクターヘリの就航から2年。都内の医療関係者は「小池政策は穴だらけ。このままでは救える命も救えなくなるのではないか」と危機感を募らせる。

 都のドクターヘリ事業が抱える大きな問題のひとつが「異常なキャンセル率の高さ」である。

 都道府県ごとの運航データが明記されている「2023年度ドクターヘリ事業運航実績」(全日本航空事業連合会作成)によれば、都のドクターヘリの運航回数1360回のうち、患者を運んだ回数は306回、患者を運ばずに戻ってきたキャンセルの回数は1054回だという。

 計算するとキャンセル率は77%、実に約8割となっている。前年度における東京都のキャンセル率を調べてみると、やはり78%と高い数字である。

 隣県の数字をみると、埼玉県は10.7%、千葉県は27.9%。東京都を除いた全国平均を調べると、18%と低い水準で収まっており、東京都の数字がいかに異常であるかが判る。

 これには日本航空医療学会のトップである猪口貞樹理事長も首をかしげる。

「東京都のキャンセル率はあり得ない数字です。他の都道府県の数字を見ても、通常のキャンセル率は20%、高くて50%程度です。ドクターヘリは、症状を重めに判断し、出動のハードルを低くするオーバートリアージという考え方で運用されますが、それはどの都道府県も同じ。なぜ東京都だけが8割近いキャンセル率になるのか不可解です」

 6月5日(水)配信の「 週刊文春 電子版 」および6月6日(木)発売の「週刊文春」では、赤石氏による東京都のドクターヘリに関するレポートを3ページにわたって掲載する。不透明な落札経緯、国交省が運航事業者であるヒラタ学園に出した「事業改善命令」と「警告書」の中身、医師・看護師を派遣する杏林学園の理事長が「委託会社の変更を真剣に検討する」と語ったインタビューなどを詳しく報じる。