うまくいっていると思っているのは自分だけ…部下がついてこない管理職がつい口にしてしまうダメワード

AI要約

管理職になったら部下との接し方について、フラットな関係を維持することが難しいという経験を通じて学んだ教訓。

上司と部下は評価をする側とされる側としての関係性が生じ、同志的な連帯感だけでは不十分であることを理解する必要がある。

部下を育てるためには、適切な上司としての姿勢を持つことが重要である。

管理職になったら部下とどう接すればよいのか。人材研究所社長の曽和利光さんは「以前は『フラットな職場や上司部下関係は素晴らしい』とシンプルに思っていたが、そんなスタンスだからこそ部下がついてこなかった」という――。

 ※本稿は、曽和利光『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30 なぜこの言い方がNGなのか』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。

■NGワード「俺は役割で管理職をやっているだけだよ」

 初めて管理職になるというのは、誰にとっても難しい経験です。私は32歳で最初に管理職になったのですが、そこでした失敗があります。

 管理職になる前は、「部下グループの中で一番上のお兄さん」という居心地の良いスタンスで仲間とともに仕事をしており、管理職になったあともそのスタンスを続けようと思っていました。そこで「これからも、今までと変わらずにみんなとはフラットに付き合いたいし、みんなも上司だからと遠慮せず、言いたいことはストレートに言ってほしい」と、管理職になって最初の会議でグループのメンバーに伝えました。若くして昇進した上司がよく言いそうな、聞こえのよい言葉です。

 ところが意に反して、それは不評だったようです。

 そのあとに続いた管理職としての日々は、部下は多いが上司は1人、部下は団結するが上司は孤立する、という物悲しいものでした。部下にフランクに話しかけても、表面的には笑顔で返してはくれるものの、心の底ではそっけないのが透けて見える、そんな毎日が続きました。「フラットな職場や上司部下関係は素晴らしい」とシンプルに思っていた私には、いったい何が悪かったのか見当もつかず、ただとまどいしかありません。「『何であんなやつが上司になったのか』と不満なのだろうか」と悩んだり、「急に偉くなってしまって、どう対応してよいのかわからないのではないだろうか?」と勝手な想像をしたりしていました。しかし、原因はそこにはありませんでした。

■評価を「する側」と「される側」

 答えは案外に簡単なもので、上にある見出しの通りです。

 あるとき先輩上司と飲みに行き、酔いにまかせて「あまりほかのメンバーとの関係がうまくいっていないように思う」と、正直に打ち明けました。その上で、先に述べたような「管理職になったからといって上下関係を作るのではなく、今まで通りフラットに接してほしい」という自分流のマネジャーとしての姿勢を話したところ、先輩上司は「そんなスタンスだからこそ、部下はついてこないんだ」と言い当てました。

 つまるところ、上司と部下はいかに同志的な連帯感があったとしても、それまでの部下同士との関係とは違い、評価を「する側」と「される側」である、ということです。どんなに親しみのある関係でも、その一線だけは消すことはできません。それなのに「フラットでいたい」などと自分にとってラクなだけのおめでたいスタンスでいたならば、それはある意味「責任放棄」でもあったのです。グループメンバーたちは、それを繊細に感じ取っていたのでしょう。