長野智子氏が見た 日本の女性活躍が進まない「謎」 男女格差G7で最下位 田原総一朗氏と立ち上げた超党派勉強会で奔走

AI要約

日本が過去最低のジェンダーギャップ指数を記録し、女性の国会議員増加を目指す取り組みについて考察。

クオータ制の導入がジェンダーギャップ改善に効果的であり、企業役員の女性比率向上事例も示唆されている。

日本の政治や経済分野における男女格差の現状と必要性について、社会のシステムの改革が不可欠であることを指摘。

長野智子氏が見た 日本の女性活躍が進まない「謎」 男女格差G7で最下位 田原総一朗氏と立ち上げた超党派勉強会で奔走

世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数2023」の世界ランキングで日本は125位と過去最低を記録し、主要7カ国(G7)の中でも最下位に沈み続けている。なぜこんなにジェンダーギャップが改善されないのか――。キャスター・ジャーナリストの長野智子氏はこの疑問を出発点に、「女性の国会議員を増やす」という目標を掲げ、2021年、超党派の女性議員による「クオータ制実現に向けての勉強会」を田原総一朗氏と立ち上げた。議席や候補者の一定比率を女性に割り振る「クオータ制」を導入している国は100カ国・地域を超え、導入することでいくつもの社会の変革が起こる可能性を秘める。勉強会の事務局長として奔走する長野氏に日本の女性活躍が進むヒントを聞いた。

――「クオータ制実現に向けての勉強会」を立ち上げたいきさつを教えてください。

「長くテレビの報道番組に携わってきて、2014年にはニュースサイト『ハフポスト日本版』の編集主幹にもなりました。両方の活動をしていくなかで、日本が掲げる少子高齢化や労働力人口減少への対策、女性活躍という看板は立派なのに実効性が伴わないのは、当事者の立場に立った政策が少ないからではないかと感じるようになりました。毎年、ジェンダーギャップ指数ランキングで日本が低迷しているニュースを伝えながら、なぜこんなに改善されないのだろうという疑問もあった」

「きっかけは、2020年に報道番組を卒業することになったときに田原総一朗さんが開いてくれた食事会です。『長野さん、これから何をしたいの』と聞かれて、取材をして何か発信していけたらいいなという話をしたら、もしジャーナリストを名乗りたいなら自分の中に軸を持たなければならないと指摘されました。その時に一番に浮かんだのが、女性の国会議員を増やしたいという思い。それを伝えたところ『いいじゃない、やりなさいよ』ということで、女性の議員を何人か紹介していただいて、相談を重ね、2021年5月に超党派の女性議員による勉強会を立ち上げました」

「日本は特に政治における男女格差が深刻で、衆議院議員の9割は男性です。政治分野のジェンダーギャップ指数は146カ国・地域中138位とワースト10に入ってしまっています。2月に亡くなられた元文相の赤松良子さんがクオータ制実現を目指して活動された『Qの会』が有名ですが、多くの方がこうして長い間さまざまな取り組みをしているのに変わらない。そこの真相にも切り込みたいと思いました」

――日本は経済分野のジェンダーギャップ指数も146か国中121位に沈んでいます。

「産業界は政治よりは動きが早いと感じます。この2~3年、大企業中心に変わってきましたが、日本の労働者の7割以上を占める中小企業ではまだ女性が働きやすい仕組みが整えられていない。最近、育児中の女性が子どもの体調不良で仕事を休んだりするのを『子持ち様』と言って批判することが論争を呼んでいますね。『子持ちの女性のせいで損をしている』という発想になるのは本人が悪いのではなく、会社の仕組みが整わないのに女性活躍を進めようとするからで、社会のシステムの問題です」

「例えばノルウェーも長らく企業役員に占める女性比率は数%と低迷していましたが、政治主導で変えてきた歴史があります。2000年代に世界で初めて企業に対し役員の一定数を女性にすることを求めるクオータ制を導入しました。上場廃止などの罰則も含む厳しい内容でしたが、今ではノルウェーの企業の女性役員の割合は4割を超えているんです」