「女性の医師が多い手術チームは患者の転帰を改善する」ことが研究で判明

AI要約

女性の麻酔科医と外科医の割合が高い病院の手術チームは、患者の転帰を改善し、術後の合併症を軽減することが、新たな研究で示された。

研究結果によれば、女性の外科医と麻酔科医が35%以上で構成されるチームを擁する病院では、良好な患者の転帰が報告されている。

この研究は、手術チームの性的多様性が医療の質向上に重要であることを示唆しており、女性医師の活躍がパフォーマンスに寄与していると述べられている。

「女性の医師が多い手術チームは患者の転帰を改善する」ことが研究で判明

女性の麻酔科医と外科医の割合が高い病院の手術チームは、患者の転帰を改善し、術後の合併症を軽減することが、新たな研究で示された。

トロント大学の研究者らによる、医学誌「British Journal of Surgery」に掲載された同研究は、2009~2019年にかけてカナダのオンタリオ州にある88の病院で行われた70万件以上を超える待機的手術を分析している。

それによれば、女性の外科医と麻酔科医が35%以上で構成されるチームを擁する病院では、術後の患者の転帰が良好であるという。

また、このような病院で手術をした患者は、術後90日以内に重大な合併症に罹患する確率が、他の病院よりも少なく、平均値の14.4%よりも3%低かった。

このことから、「手術チームの性的多様性を高めることは、単に公平性や社会正義の問題だけではなく、パフォーマンスを最適化するうえでも重要である」と述べている。

「女性の外科医と麻酔科医が35%以上」というこの35%の“閾値”は、同研究チームによれば、米国、イタリア、オーストラリア、日本を含む「さまざまな国の、医療以外の業界のいくつかの研究結果とも一致」しており、全体的に「チームの女性メンバーの数が35%以上になると、より良いパフォーマンス結果が得られる」という。

さらに、「女性外科医による治療では、チームの性的多様性の向上と患者の転帰の改善に関連性がみられたが、男性外科医による治療ではこの傾向は観察されなかった」と研究者らは付け加えている。

この研究の筆頭著者であるトロント大学のジュリー・ハレットは、「これらの結果は、多様性が周術期(患者の外来から入院、麻酔・手術、術後回復、退院・社会復帰までの、術中だけでなく手術前後を含めた一連の期間のこと)のケアの質にどのように寄与するかを理解するうえで重要な変化の始まりだ」と、英紙「ガーディアン」に語っている。

これまでの研究でも、女性医師から治療を受けた患者は男性医師が治療した場合よりも合併症を経験したり、フォローアップケアが必要になる可能性が低いことが示唆されてきた。

しかし、ハレット氏は、研究チームが「女性臨床医と男性臨床医を比較するという二項対立の議論」に異議を唱え、代わりに「質の高いケアを向上させるためのチームの資産またはボーナスとしての多様性の重要性を強調したい」と語っている。

外科チームの性的多様性を改善するには、女性医師の体系的な採用と定着を確保するための「意図的な努力」が必要になるとの考えを、彼女は示している。