普及率94%なのに「ETC助成キャンペーン」が毎年繰り返されているワケ

AI要約

ETC普及率が94.3%と高まっており、ETC専用ICの普及も進んでいる。

国土交通省と高速道路各社がETC普及を推進する理由の一つは、現金車とETC車の通行料金収受コストの差が大きいため。

ETC専用ICの整備により、高速道路の利便性向上とコスト削減が実現できる。

普及率94%なのに「ETC助成キャンペーン」が毎年繰り返されているワケ

 現在のETC普及率は94.3%で、すでに広く知られたサービスだ。ETCが初めて導入されたのは1997(平成9)年で、小田原厚木道路の小田原本線料金所で実験的に運用された後、2001年には全国の高速道路で一般利用が始まった。

 ETCの普及にともない、ETC専用インターチェンジ(IC)も増えてきている。NEXCO中日本は2024年に23の料金所をETC専用化することを発表した。また、NEXCO各社や首都高速道路、阪神高速道路などもETC専用料金所を拡大している。

 もともと国土交通省と高速道路6社は2020年に

「都市部で5年、地方部で10年程度でのETC専用化導入の概成を目指す」

というロードマップを発表しており、現在順調にETC化が進んでいるといえる。

 さらに、ETC普及促進の一環としてETC車載器の購入助成キャンペーンも行われている。すでに普及率が9割を超えているため、十分な状況に思えるが、それでも毎年のようにETC車載器購入助成キャンペーンが実施されているのは、いったいなぜだろう。

 国土交通省と高速道路各社がETCの普及にこだわるのには理由がある。そのひとつは「料金収受コスト」だ。国土交通省が2011(平成23)年のデータを基に算出したところ、ETC車と現金車の通行料金収受コストの差は4倍にもなる。

 具体的には、ETC車が1台あたり35円に対し、現金車は約4倍の

「141円」

にもなる。この年のETC普及率は85%だったため、現在の普及率が上昇していることを考えると、その差はさらに広がっていると考えられる。現金車にコストがかかる理由は人件費であり、ETC専用化が完了すれば大きなコストカットにつながる。

 高速道路の利用者を増やすためには、高速道路の利便性を向上させることが欠かせない。その一環としてICの整備が重要である。しかし、通常のICの整備には多大なコストがかかる。建設コストは約35億円、管理コストも年間約0.9億円に達する。日本の高速道路のIC間の距離は長く、外国と比べても、英国が4km、米国が5kmであるのに対し、日本は

「約10km」

だ。このため、コストが足かせになっているといえる。

 一方、ETC専用のICにすると、建設コストは約20億円、管理コストは約0.7億円に削減できる。ETC専用ICであれば整備のハードルが大きく下がる。国土交通省や各高速道路会社にとって、高速道路全体を維持管理しつつ利便性を向上させ、高速道路の活性化を図るためには、ETC専用化が絶対に必要なのだ。