ドコモとの提携で得るものとは、マネックス清明祐子の未来戦略

AI要約

清明祐子がカリスマ創業者の後を引き継いだマネックスは、NTTドコモとの資本業務提携を発表。この意思決定は社会的なインパクトを最大化するための戦略であり、事業の成長を後押しするものだ。

提携によりマネックスは子会社売却益を得たり、ドコモの顧客基盤にアプローチできるようになった。これにより将来の成長への可能性が広がった。

24年3月期の決算では、マネックス証券を含む連結税引き前利益が10倍に増加。今後はアセットマネジメント事業などに投資を加速し、利益成長を図る予定だ。

ドコモとの提携で得るものとは、マネックス清明祐子の未来戦略

2023年10月発表のNTTドコモとの資本業務提携は業界をざわつかせた。カリスマ創業者の後を引き継いで1年以内での大胆な意思決定。その真意とは。

「私たちの理念に到達できることならやる。声に出すだけでなく、実際に行う」

カリスマ創業者である松本大からマネックスグループ(以下、マネックス)のCEOを2023年6月に引き継いだ清明祐子は、同社の「個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化する」という企業理念のもと、大胆な意思決定をスピーディに実行している。

その象徴が23年10月に発表したNTTドコモ(以下、ドコモ)との資本業務提携だ。マネックスはこの提携にあたってマネックス証券を100%子会社とする中間持株会社を設立。株式譲渡と第三者割当増資で出資比率はマネックスが50.95%、ドコモが49.05%となる一方、取締役の過半数を指名する権利など実質支配力基準に基づき、中間持株会社ひいてはマネックス証券はドコモの連結子会社になった。

祖業のマネックス証券を売ってしまうのか──。株式市場関係者を中心にこの発表は驚きをもって受け止められたが、清明は意に介さない。「だって、これをやったほうが私たちのゴールに近づけるじゃない」。

マネックスは子会社売却と引き換えに、将来の成長投資に充てるキャッシュを得たほか、ドコモが保有する1億人規模の顧客基盤にアプローチすることが可能になった。「私は売ったというよりもドコモという最高のパートナーを引き入れたという感覚なんです。証券ビジネスで社会的なインパクトを最も出せるようにするにはどうすればいいか。その最適解を求めた結果がこのストラクチャーだった」と清明は言う。「譲れるものは譲って、もらいたいものをもらおう、と」

マネックスの24年3月期決算は、管理会計ベースでマネックス証券を含んだ連結税引き前利益が472億円と前年比で10倍になった。ドコモへの子会社売却益や評価益の計上が利益急増の主因で、米国の証券事業や暗号資産交換業コインチェックを中心とするクリプトアセット事業が好調だったことも寄与した。

マネックス証券が連結から外れる影響で、25年3月期以降の利益はいったん踊り場を迎える。しかし、ドコモの顧客基盤を活用することによる将来の成長ポテンシャルは大きい。売却益を元手にアセットマネジメント事業など成長期待の強い分野にもM&A(合併・買収)を含めた投資を加速させる考えで、マネックスは中長期的な視点で事業基盤の強化・拡充を進め、さらなる利益成長ステージへのステップアップを見据えている。