町でほとんど見かけない「究極のエコカー」が復活?トヨタ・BMW全面提携に注目すべきワケ

AI要約

トヨタとBMWがFCVで全面提携し、燃料電池車の開発を加速する。

次世代車の主流はBEVだが、FCV復権の可能性が高まる。

トヨタとホンダがFCVに期待し、電動車戦略を展開している。

町でほとんど見かけない「究極のエコカー」が復活?トヨタ・BMW全面提携に注目すべきワケ

● トヨタとBMWがFCVで全面提携 BEV減速で新たにFCV復権か

 1990年代末の独ダイムラーと米クライスラーの合併劇から始まった“世界自動車大再編”のきっかけが、当時、21世紀を勝ち抜くには「究極のエコカー」開発に向けて企業単独ではまかなえない莫大な投資が必要だったことが思い起こされるようだ。

 トヨタ自動車と独BMWグループは9月5日、水素分野での協力関係を強化することで合意し、基本合意書を締結した。両社は今後、燃料電池(FC)インフラ整備などに共同で取り組んでいくほか、小型の高効率次世代燃料電池システムの開発を共同で目指す。提携の第1弾として、BMWは同社初となる量産の燃料電池車(FCV)を2028年から販売する計画だ。

 提携の狙いは、両社の協業を深化・本格化させることで量産コストと販売価格を下げ、「水素社会への移行を加速する」(佐藤恒治トヨタ自動車社長)ことにある。

 水素を燃料とし、水素と酸素の化学反応で電気をつくるFCVは、二酸化炭素(CO2

)を排出せず水しか生じないことから、本来「究極のエコカー」とされる。 だが、その究極のエコカーは、燃料となる水素を充填する「水素ステーション」の高額な設置費用と燃料電池システム全体のコスト高がネックとなってきた。ここ10年で次世代車の本命はバッテリーEV(BEV)に移行し、“EVシフト”の世界的潮流の中でFCVは影が薄くなっていたのが実情だ。

 しかし、世界では燃料電池車が一般的に「FCV(フューエル・セル・ビークル)」と称される中で、トヨタとホンダは近年「FCEV」と呼称するなど、EVから派生する電動車戦略の一環としての位置付けを鮮明にしており、ここにきて新たにFCVへの期待が高まっているのだ。

 もともと、FCVは日本勢のトヨタとホンダがいち早く実用化を進めてきた。2002年にはホンダが「FCX」、トヨタが「FCHV」をリース販売によって実用化したのに続き、14年にトヨタが世界初の量産FCV「ミライ」を発売、ホンダも16年に「クラリティ FUEL CELL」を発売している。

 また、トヨタは今回の全面提携に先駆けて12年からBMWとFC分野での戦略提携をスタートしているほか、ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)と13年からFCシステムで提携している。いずれも長い提携の中で「苦節の10年」を歩んできた一方、直近では新たな「FCEV戦略」として、次のステップへの本格展開をにらんでいるのだ。

 確かに、ホンダは昨年、米GMとのBEV量産車の共同開発について計画を中止するなど、協業は必ずしも順風満帆ではない。直近では、9月12日にGMは韓国・現代自動車(ヒョンデ)と新たに車両の共同開発、製造、クリーンエネルギー技術に関して将来的な協力の覚書を締結している。