人数の少ない中小企業でダイバーシティを実現するには? イントラパーソナル・ダイバーシティとは

AI要約

「イントラパーソナル・ダイバーシティ(Intrapersonal Diversity)」とは、一人ひとりの中に多様な視点や役割を持つこと。組織におけるダイバーシティの重要性やイノベーション創出について述べられています。

企業でダイバーシティの推進が必要な理由や実現の難しさについて触れられています。個人内の多様化がイノベーションに及ぼす影響や、中小企業における課題も取り上げられています。

最後には、イントラパーソナル・ダイバーシティの重要性と具体的な取り組み例について紹介されています。

人数の少ない中小企業でダイバーシティを実現するには? イントラパーソナル・ダイバーシティとは

「イントラパーソナル・ダイバーシティ(Intrapersonal Diversity)」とは、一人ひとりの中に多様な視点や役割を持つこと。日本語では「個人内多様性」などと呼ばれています。組織におけるダイバーシティというと、多様な属性・経験を持つ人を採用することで実現できる「人材の多様化」を指します。一方、近年はイノベーションを創出する観点から「個人内の多様化」が注目されています。役割を一つだけ担っている人と、複数の役割を担い役割間の対立による葛藤を経験している人とでは、個人の中の「知の組み合わせ」の数に差があり、後者の人材のほうがイノベーションを起こしやすいと言われています。

なぜ、企業でダイバーシティの推進が必要なのでしょうか。経営学の観点からすれば、ダイバーシティがイノベーション創出につながるためです。イノベーションといえば、「両利きの経営」という考え方が有名です。主力事業の改善(知の深化)を行いながら、新規事業に向けた実験や行動(知の探索)を行うことの重要性を唱えたものです。既存の「知」と別の「知」との組み合わせからイノベーションは生まれます。

イノベーションよりもイメージしやすいダイバーシティ推進の目的としては、斬新なアイデアが出やすくなる、有能な人材への訴求力が高まる、といったものがあります。

しかし、実際にはダイバーシティの実現は簡単ではありません。そもそも人数の少ない中小企業は、ダイバーシティ推進のために無理をして新規採用をするわけにもいきません。また、インクルージョンの考え方が浸透しないまま異質性の高いメンバーを迎え入れても、そのメンバーは能力を発揮することが難しく、周囲ともなじめずに退職してしまうでしょう。

従業員数が少ない中小企業や新卒入社組が大多数を占める大企業など、人材の多様化へのハードルが高い企業では、イントラパーソナル・ダイバーシティの充実に注力するのもいいでしょう。近年注目されている越境学習やリスキリングは、イントラパーソナル・ダイバーシティを高めるのに有効です。さまざまな経験や学びは、「知の探索」につながります。いろいろな立場を経験することにより役割間の葛藤が生まれ、内省によって多様な価値観を受け入れられるようになります。

イントラパーソナル・ダイバーシティに着目する企業も増えています。たとえばBIPROGY株式会社では、個の多様性を高めるため、自律的なキャリア構築の支援や能力開発へ投資しています。オリックスグループでは、社内インターン制度や異なる事業部間のジョブローテーションを行うことで、多様な経験を積める環境を整えています。

なぜダイバーシティを推進するのか。目的に立ちかえることで、「多様な人材を雇う」以外にもできる施策が見つかるかもしれません。