「約500円のワンタン」目当てに中国人がやってくる…東京で「ネット予約できない中華料理屋」が増殖している理由

AI要約

東京近郊で急増する「ガチ中華」は本場の中華料理店で、日本人向けのアレンジをせず中国人客向けに提供している。店舗は主に新宿、池袋、高田馬場、上野、小岩などに集中しており、80万人以上の在日中国人をターゲットとしている。

一部のガチ中華店はネット予約ができず、電話での予約を要求しており、その理由は中国人客が店のウィーチャットを通じて直接予約を入れているためである。これらの店は中国人客を想定しており、日本の一般的なグルメサイトよりも中国人向けの情報発信を重視している。

中国人が多く住むエリアには必ず中華料理店が存在し、日本でもそれは例外ではない。ガチ中華店の増加は、在日中国人の需要に応えるためであり、中国人向けのサービスが求められていることを示している。

「ガチ中華」と呼ばれる中華料理店が東京近郊を中心に急増している。日本人の舌に合わせた味付けはせず、一部の店は電話でしか予約できないのが特徴だ。なぜこのような店が人気なのか。『日本のなかの中国』(日経プレミアシリーズ)を出したジャーナリストの中島恵さんが解説する――。

■高田馬場のガチ中華は「中国人客が9割」

 東京近郊を中心にガチ中華がブームになっている。ガチ中華とは、日本人向けにアレンジしていない本気(ガチンコ)の本場中華料理店という意味で、数年前から急速に増えている。都内で多いのは、新宿、池袋、高田馬場、上野、小岩などのエリアだ。

 中国の有名チェーンが東京に進出するケース、異業種で働いていた在日中国人が飲食業に参入するケース、最近、日本に移住(=潤(ルン))してきた富裕層が比較的始めやすい事業として開店するケースなどがある。

 いまでは「四川風火鍋」「羊肉の串焼き」「ザリガニ」など、数年前まで一般の日本人が一度も見たこともなかったメニューでさえ、珍しいものではなくなった。いずれも主なターゲットは、日本に80万人以上もいるとされる在日中国人だ。

 23年に私が訪ねた高田馬場の湖南料理店は、客の9割が中国人で、店内には中国語が飛び交っていた。顧客は20~30代が多い。内装といい、店の雰囲気といい、メニューといい、まるで中国の飲食店に入ったかのようだ。

■なぜかグルメサイトでネット予約できない

 お店に向かう前、グルメサイトで検索したところ、ネット予約はできず、電話でしか対応していないことを少し不思議に思った。そうしたお店も、もちろんあることはあるが、徐々に少なくなっている。電話してみると、店員は当たり前のように中国語で受け答えをした。なぜネット予約ができないのか。

 店に着いてすぐその理由がわかった。中国人客は店のウィーチャットとつながっており、そこに直接予約を入れるからだ。つまり日本のグルメサイトに「店舗情報」は掲載されてはいるものの、店側もウィーチャットを使いこなせる中国人の顧客しか、ほぼ想定していないということ。電話で予約する人などほとんどいない上に、注文もすべて中国語なのだ。

 中国人が多く住むエリアに必ずあるのが中華料理だ。これは日本に限らず、世界のどこにいっても鉄則のようだ。新宿、池袋などに「ガチ中華」の店が多いのは、そこに中国人が多く集まっている証拠でもある。中国人向け予備校が多い高田馬場も同様だ。