投資額700億円、容量5倍のEV用電池 パナソニックが量産へ

AI要約

パナソニック エナジーは、約5倍の容量を持つ電気自動車向け新型リチウムイオン電池の量産準備が完了。

新型の4680セルはEVの航続距離延長やコスト削減に貢献し、生産能力は年産3~4ギガワット時。

和歌山工場をリニューアルし、次世代電池の開発・生産に従事する人財も増やす予定。ならびに再生可能エネルギーを活用したCO₂排出実質ゼロ工場として生産開始予定。

投資額700億円、容量5倍のEV用電池 パナソニックが量産へ

 パナソニック エナジーは9日、従来に比べて約5倍の容量を持つ電気自動車(EV)向け円筒形リチウムイオン電池の量産準備が完了したと発表した。直径46ミリメートル、長さ80ミリメートルの最新型「4680セル」で、和歌山工場(和歌山県紀の川市)に約700億円を投じて生産設備などを構築。第2四半期(7~9月)末の量産開始を計画していたが、今後、主な顧客であるEV大手米テスラの最終評価を経て量産を開始する予定だ。

 4680セルは、従来の2170セルと比べ約5倍の容量を持つことから、EVの航続距離の延長に貢献するほか、同じ電池容量を得るためにEVに搭載するセル数を大幅に減らせる。このため、バッテリーパックの組み立て工程の効率化や、EVコストの低減につながることなどが期待される。生産能力は年産3~4ギガワット時。

 一方、1セルあたりの容量が大きくなるため、製造工程ではより高度な技術や工法が求められる。生産には同社の30年にわたる円筒形リチウムイオン電池の開発やノウハウを生かした量産技術が生かされている。

 9日には、4680セルのマザー工場となる和歌山工場をリニューアルし、開所式を開催した。和歌山工場は、リチウムイオン電池の部品製造を行ってきた拠点で、リニューアルを機に、今後は4680セル生産のマザー工場として新製品・新工法の実証拠点としての役割も担う。国内外の工場へ実証結果を展開することで、製品品質とともに、ものづくりにおける競争力を高め、コア拠点化を目指す。

 2024年度中には約400人の人財が和歌山工場で次世代電池の開発・生産に従事する予定。また、環境と調和したものづくりを目指し、太陽光発電や陸上風力発電など再生可能エネルギーを最大限活用した二酸化炭素(CO₂)排出実質ゼロ工場として生産を開始する。

 只信一生社長執行役員は「4680セル量産技術の実現は、長年にわたる円筒形リチウムイオン電池製造の技術と経験の蓄積だ」とした上で、「今後4680セルを新たなラインアップに加え、より幅広いニーズに応え、EVの普及に大きく貢献していく」とコメントしている。