【令和の米騒動の真因】インバウンドよりも大きかった作付面積の減少、「主食向け」をあきらめる米農家の存在

AI要約

1994年の「平成の米騒動」と2004年の米価格高騰は、主に天候要因による供給不足が原因であり、短期間で収まった。

しかし、現在の「令和の米騒動」は需要と供給の両面で要因が絡み、価格高騰が続いている。

在庫水準の減少も価格高騰の一因となっており、今後のリスクもある。

 1994年の「平成の米騒動」、そして2004年の米価格高騰は、いずれも前年産が冷夏で凶作となった影響が大きい。すなわち、一時的な天候要因による供給不足が背景であり、作柄が豊作または平年並みに戻ったことで価格高騰は短期間で収まった。

 だが、足元の「令和の米騒動」では、需要面と供給面の双方に一時的な要因と構造的な要因が絡み、価格高騰につながっている。先行きの米価格は不透明で、高騰が長引くリスクもある。(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 <米価格が高騰>

 このところ、米の入手が困難になるとともに価格も高騰しており、「令和の米騒動」と呼ばれる状況となっている。

 全国CPI(消費者物価指数)によれば、米類の価格は2024年7月に前年同月比+17.2%と大きく上昇。伸び率は「平成の米騒動」と呼ばれた1994年5月に記録した+21.4%、そして2004年2月に記録した+25.2%に迫る高水準へ達した。

 米価格は8月以降さらに上昇しているとみられる。

 全国に先行して公表される8月中旬速報の東京都区部CPIによれば、米類の価格は前年同月比+26.3%となり、7月の+17.7%から伸び率が拡大した。気象庁より「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発令され、備蓄のためのまとめ買いが発生、価格高騰につながったとみられる。

 8月下旬以降は台風10号に備えたまとめ買いも生じ、折からの価格高騰に拍車が掛かっている。

■ 前年比で92万トン減少していた米の在庫

 <在庫水準が切り下がり、価格高騰につながる>

 過去そして現在の価格高騰は、当然といえば当然であるが、需給逼迫で在庫水準が切り下がったことによりもたらされている。

 民間流通と政府備蓄を合わせた在庫水準は、2004年6月末に273万トンとなり、2003年6月末の365万トンから大きく切り下がった。前年差では92万トンの大幅減少である。直近の在庫水準を確認すると、2022年6月末に309万トンだった在庫は、2024年6月末に247万トンと2000年代半ばを下回る水準まで切り下がっている。2年間で62万トン減り、「令和の米騒動」につながった。

 「平成の米騒動」前後における民間流通と政府備蓄を合わせた在庫水準については、時系列のデータを得られない。ただ、「食料需給表」等を用いて簡易的に試算すると、1992~93年頃に250万トン前後あった在庫水準は、1994年に100万トン前後まで急速に切り下がったとみられる。当時、在庫を取り崩しても供給不足が解消されず、政府はタイ米などの緊急輸入に踏み切った。