7000人診察してわかった、「会社のヤバい人」の獲物になる人が「断れない理由」

AI要約

強い権威への恐怖や罪悪感、承認欲求などの要因から、断れない人が職場を腐らせる人たちに標的にされやすい。

罪悪感は自己肯定感を低下させ、自己主張を妨げる可能性があり、職場を腐らせる人はそのような弱みを利用して行動する。

職場を腐らせる人が受け入れを得ると、要求をエスカレートさせる傾向があり、断る勇気が必要である。

7000人診察してわかった、「会社のヤバい人」の獲物になる人が「断れない理由」

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。

弱くておとなしい人がターゲットにされやすい一因として、なかなか断れないこともあるだろう。たとえば、上司から「君の将来を思って」「お前のため」といった殺し文句で過大なノルマを押しつけられても、ときには不正に手を染めてでもノルマを達成すべきだとほのめかされても、断れない。あるいは、好きでもなく、交際する気も微塵もない異性から押しつけがましくプレゼントを手渡されても、断れない。こういう人は絶好のカモに違いない。

なぜ断れないのか?その理由として、権威への恐怖、罪悪感、承認欲求という三つの要因が挙げられる。

権威への恐怖というと大仰に聞こえるかもしれないが、平たくいえば自分より強い相手を前にして縮こまってしまう感じである。怖いお父さんに怒鳴られ、身動きできなくなっているような子どもを思い浮かべていただきたい。成長してからも、教師や上司などの"偉い人"を前にすると畏縮してしまう経験は誰にでもあるはずで、そういうときに恐れ入って小さくなる人ほど、断れない。「わがままと思われるのではないか」「恩知らずとののしられるのではないか」などと恐怖にさいなまれるからだ。

また、職場を腐らせる人は往々にして責任転嫁の達人であり、非が相手にあることを認めさせようとして、巧妙に罪悪感をかき立てる。一方、自信のない人ほど、必ずしも自分に落ち度があるわけではないのに、責任転嫁の達人を前にすると「自分のせいではないか」と罪悪感を覚えやすい。そのため、双方が共鳴し合って、罪悪感が何倍にも増幅されることもまれではない。

こうした罪悪感は、さまざまな影響を及ぼす。何よりも深刻なのは、自己肯定感を低下させ、自己主張を妨げることだ。その結果、能力を充分に発揮できず、自発的な選択や行動ができなくなることさえある。

当然、何をやってもうまくいかないが、これは職場を腐らせる人にとっては思う壺だろう。そっと忍び寄り、劣等感をチクチクとつつきながら罪悪感を一層刺激する。その結果、ターゲットはさらに自己肯定感が低下し、「自分はダメだ」という思いにさいなまれる。ときには、埋め合わせをしなければならないという強迫観念にとらわれて、言いなりになりかねない。

おまけに、断れない人が強い承認欲求の持ち主であることも少なくない。もちろん、他人に認められたい欲求が努力の原動力になることは否定できないし、職場という組織で仕事をしていくうえで、他人の評価や意見に耳を傾けることも必要だ。他人の目に自分の姿がどのように映っているのかを知ることによって初めて、自分が周囲の期待に応えているか、どうかがわかるのだから、他人の評価を完全に無視するわけにはいかない。

しかし、なかには、他人からどう見られているかを気にするあまり、他人の評価が唯一の判断基準になっている人さえいる。他人の評価に耳を傾けすぎると、それに合わせようとして振り回され、次のような悪循環に陥りやすい。

(1)他人が自分についてどう言っているかを気にするほど、自分の判断に自信を持てなくなる。

(2)自分の判断に自信がなくなるほど、自分の価値について不安になるので、他人から認められたい欲求が強くなる。

(3)他人に認められたい欲求が強くなるほど、気に入られるようにしようとするので、他人の評価をますます気にするようになる。その結果、何をするにも他人の評価に依存し、顔色をうかがわずにはいられない。

断れない理由が、権威への恐怖にしろ、罪悪感にしろ、承認欲求にしろ、職場を腐らせる人はいずれかをつつく。何らかの権威をちらつかせることもあれば、罪悪感をかき立てることもあるだろう。あるいは、自分の要求を受け入れなければ、あなたの評価が下がることになると暗に脅すかもしれない。

厄介なことに、一度受け入れてもらって味をしめると、次から要求をさらにエスカレートさせるのが職場を腐らせる人の常套手段である。だから、必要な場合には、拒否の意思を伝える勇気を持たなければならない。きちんと断るのは、わがままでも何でもなく、健全な自己主張の一環であり、生きてゆくため、何よりもわが身を守るために不可欠なのだから。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。