【解説】「コメが足りない」の正体と今後の価格 関係各所からの声で見えてきた「品薄の構図」

AI要約

コメの品薄状態は消費者には不安を与えているが、農水省は在庫が確保されていると説明している。

品薄の原因は、昨年の天候による生産減少と10年ぶりの需要増加によるものである。

消費者の買いだめも品薄を助長し、コメの消費が増加する一方で在庫が少なく、店舗には十分に補充されない状況が続いている。

【解説】「コメが足りない」の正体と今後の価格 関係各所からの声で見えてきた「品薄の構図」

「最近、いつ来てもコメがないね…」 。今週、こんな声が聞かれたのは、東京・葛飾区のスーパー。

コメをめぐっては、一部スーパーなどで棚からコメが"消え"たり、あるいは、入荷しても「お一人様、一点まで」と購入制限がかけられたりする品薄の状態が続いています。

しかし、農林水産省は一貫して「全体の需給として在庫は確保されている」という説明を繰り返していて、消費者が直面している状況とはギャップがあります。

いったいなぜ、ここまで消費者が「コメが足りない」と感じる事態になってしまったのでしょうか? 小売りの現場、卸売業者、生産者、そして農水省、それぞれを取材すると、品薄が起きた「構図」が見えてきました。

もともと新米が出回る前の8月は、1年でコメの在庫量が最も少なくなる時期。 そこに地震や台風に見舞われ、消費者が主食のコメを「余分に確保しておきたい」と"買いだめ"に走ったことが「品薄」に拍車をかけたと農水省幹部は説明します。「在庫はある」と言い、実際、不足なくコメを入荷している店もあります。ではなぜ、あちこちの店舗で棚からコメが消え、一部消費者がなかなかコメを買えないという不安な状況になることを防げなかったのでしょうか? 実は"品薄の兆し"は、もっと前から生じていました。

そもそもの原因としてあげられるのは去年、食用米として流通したコメの量が少なかったこと。猛暑による高温、そして雨が少なかった影響で、主要産地である新潟県を中心として、コメが白く濁るなどの被害が出ました。結果、全国で流通するコメの量を集計した民間在庫量は今年6月末時点で156万トンと、統計を取り始めた1999年以降、最少となりました。

そこに重なったのが10年ぶりの「コメ需要の回復」です。7月に発表された主食用のコメの需要量は、農水省の予想より21万トン多い702万トン。減少が続いていた需要量が10年ぶりに増加に転じました。 農水省の分析では、コロナ禍で落ち込んでいた人流が復活し、インバウンドも増加したこと、さらに、他のさまざまな食品が値上がりする中、コメは「値ごろだ」と感じ、節約のためにコメを買う消費者が増えたことも影響したとみています。