令和の「米騒動」 米不足で価格は26%上昇も"備蓄米放出せず"「消費者不在」のコメ行政【播摩卓士の経済コラム】

AI要約

農水省がコメの品薄問題に対して消費者不在の対応を見せ、岸田総理が指示を出す一幕があった。

農水省は新米の出荷が始まれば問題が解消すると述べ、政府備蓄米の放出に慎重な姿勢を示した。

消費者が必要な量だけ購入するよう呼びかける一方、岸田総理は消費者の立場を重視し業界に円滑な流通を促すよう指示した。

令和の「米騒動」 米不足で価格は26%上昇も

店頭の棚からコメが消え、コメが手に入らないと悲鳴が上がっているのに、「全体としてコメは足りています」、「落ち着いて行動して下さい」と言うだけの農林水産省は、一体、何のために存在している役所なのでしょうか。こんな官僚答弁を繰り返すだけで、消費者不在の行政を続けるのなら、農水大臣は政治責任さえ問われて然るべきです。

■呆れた大臣記者会見

小売りの現場でコメが品薄になっている問題について、坂本農水大臣は27日の記者会見で、品薄の理由として、8月はもともと端境期で在庫が少ないことや、南海トラフ地震臨時情報や台風による需要増などを挙げました。

そして「品薄は新米が流通する9月頃には解消する」と見通しを明らかにした上で、政府備蓄米の放出については、市場への影響が大きいとして、「慎重に考えるべきだ」と否定的な考えを示しました。

そして「必要な量だけ買うなどの落ち着いた購買行動をお願いしたい」と述べたのです。

要は、そのうち新米が出てくるから、何もしないと言っているに等しい内容です。

まるで、消費者が冷静でないからコメがなくなったかのような言い方には、ただただ呆れるばかりです。

店頭にコメがなくて、必要とする人がコメを買えない状態になっています。私どもの番組の取材でも、コメが手に入らず、「毎日、麵とパンを食べている」という人もいたほどです。

■岸田総理が苦言を呈しても

さすがに岸田総理も、こうした農水大臣のいいぶりにカチンときたのでしょう。

同じ日の夕方に官邸で開かれた会議で、「消費者の立場に立って、コメの流通不足の懸念に対処するよう取り組んで欲しい」と関係閣僚に指示しました。

「流通不足」との表現で、「需給のひっ迫ではない」という農水省の立場に配慮しつつも、「消費者の立場」という言葉を使って、役所の論理に釘を刺したのです。

同日、農水省はコメの卸売業者や集荷業者に対して、円滑な流通に取り組むよう要請しました。

総理指示を受けた「業界への要請」というお決まりの対応に留まっており、このあたりが岸田内閣の限界なのかもしれません。