盲目のGT-Rオーナー【3】小さなパーツ1つでも、自分で取り付けたという達成感

AI要約

障がいを持ちながらもGT-R趣味を続けるオーナーは、積極性を持ち、パーツハンティングにも熱心に取り組んでいる。

パソコンや携帯電話の読み上げ機能を活用し、メールを読み上げてもらいながらオークションサイトでパーツを落札する楽しみを味わっている。

所有していることで人とのつながりが広がり、仲間とのドライブやツーリングを楽しむ中で、GT-Rの魅力を存分に味わっている。

盲目のGT-Rオーナー【3】小さなパーツ1つでも、自分で取り付けたという達成感

【ハコスカとケンメリ|1971年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-R Vol.3】

ハンディキャップを持ちながらもGT-R趣味を続けるオーナーは、持ち前の積極性からパーツハンティングにも旺盛な意欲を見せる。

今のパソコンや携帯電話には、画面に表示される文字を読み上げてくれる機能があることも、オーナーにとって助けとなっている。

メールが届くと、それを読み上げてくれるのだ。この機能を利用して、オークションサイトでパーツを落札するのも楽しみの1つだという。

「どこに使う部品かとか、サイズは問題ないのですが、色だけは困ります。赤といっても、どんな赤なのかは人によって感じ方が違いますからね。そこで、取り引きする相手の方には自分の病状を正直にお話して、視力があった頃の記憶をたぐり寄せて、フェラーリのような発色のいい赤なのか、くすんだ赤なのかなど、説明していただいています。どんな小さなパーツやボルト1本であっても、自分で取り付けたという達成感を味わうことができます。それも旧車ならではの醍醐味です」

そして、オーナーが一番大切にしているのは、人とのつながりだ。仲間と出かけるドライブの際に運転してもらったり、車検に出したりと、だれかの手は必ず借りることになるからだ。

「ただGT-Rが好きっていうだけでなく、実際に所有しているということがきっかけになって、交流の輪がものすごく広がりました。友人にハンドルを握ってもらい、助手席に乗りながらですけど、遠くは新潟、北海道にまでツーリングに出かけたことがあります。日常でも、自分から気軽に出かけることはできませんが、遊びに来てくれる友人が増えたことは、ひとえにGT-Rを所有していればこそだと思います。RSスタートの宮崎裕二社長、ラバーソウルの西講一郎社長、須藤自動車の須藤譲二社長、そして、オーナーの皆さんもよくしてくれるので、盲目を嘆くことなく、これからもGT-Rの音を聞き、パーツ交換をする生活を楽しんでいきますよ」

GT-Rは走らせるのが楽しいクルマなのはもちろんだが、運転できなくても所有しているということが、これだけのドラマを生んでいる。GT-Rの魅力は尽きることがないのだ。

初出:ノスタルジックヒーロー 2021年2月号 Vol.203

       (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)