元外資系証券会社部長の億トレーダー「政治に屈した日銀はもう利上げできない」「日銀はマーケットと対話できていない」

AI要約

欧米系証券会社で株式本部長を経験し、現在は米国IT企業代表の顔も持つ億トレのABC Trader氏。8月上旬の急激な株価下落について驚きを表明し、その背景には政治と日銀の関係があると指摘。さらに、日銀の利上げ決定とその影響について述べている。

CTAとグローバルマクロ系ヘッジファンドが引き起こした米国株と日本株の暴落を分析し、円キャリートレードや植田総裁の発言が市場に与えた影響を解説。日銀の利上げに関する予想と市場の反応についても触れている。

植田総裁の信念から政治への影響まで、日銀の利上げ決定に関する様々な側面を論じており、将来の展望についても示唆している。

元外資系証券会社部長の億トレーダー「政治に屈した日銀はもう利上げできない」「日銀はマーケットと対話できていない」

 欧米系証券会社で株式本部長を経験し、現在は米国IT企業代表の顔も持つ億トレのABC Trader氏。みんかぶプレミアム「一人勝ち投資術」第4回では、利上げ決定の背景にある“政治”と“日銀”の関係やいまの相場の捉え方、危険な銘柄・暴落時に自身が買い増した銘柄について伺った。

 8月上旬の急激な下げには正直、私も驚きました。この展開を予想していたストラテジストやアナリストはほとんどいなかったと思います。知り合いのファンドマネージャーも動揺していましたね。まさに「植田ショック」です。

 今回の米国株と日本株の暴落は、CTAとグローバルマクロ系ヘッジファンドが仕掛けたと言われています。米国の失業率上昇の発表に合わせて、ハードランディング懸念が出たところに、円キャリートレードで買っていた米国株が暴落し、円キャリートレードを解消し、円高が進んだ、さらに植田総裁発言で円高に拍車がかかり、日本株が暴落しました。

 私としては、7月末の金融政策決定会合では「日銀は利上げを表明しない」可能性が高いとすら思っていました。だって経済指標が弱いですから。国内総生産(GDP)も個人消費も弱い。このような状況の中で、本来は利上げするべきではありませんでした。

 また仮に利上げを表明するとしても、それが「1回だけの利上げ」であればそこまで問題はありませんでした。7月末時点で、市場は“1回”の利上げをすでに織り込んでいました。むしろ利上げの決定を表明することで材料出尽くしとなり、株価は上がる可能性も高いと考えていた。実際、場中に利上げが発表された7月31日は、大引けでは株高になっています。

 ただ読めなかったのが、「さらなる追加利上げ」への言及でした。

 もともと日銀の植田和男総裁は、ハト派の立場を鮮明にしていました。それがここに来て、急にタカ派に転身してしまった。これは“政治に屈してしまった”とみるのが自然でしょう。岸田文雄、茂木敏充、河野太郎といった利上げを推奨する政治家からの圧力に、とうとう負けてしまったのです。植田総裁の信念に基づく利上げであればまだよかったのですが、信念を曲げたうえにそれが失策だったため、マーケットからの失望も非常に大きいと言えます。