グリコの上期決算は利益半減…長引くシステムトラブル原因究明で一部製品は今も出荷停止中(重道武司)

AI要約

1984年から翌85年にかけて関西で起こった「グリコ・森永事件」の影響から40年後、江崎グリコが出荷停止と業績急落を経験する。

システムトラブルが原因で洋生菓子の出荷が停止し、56億円の特損を計上。最終利益は前年同期の半減になった。

340億円投じた基幹システムのリニューアルが逆効果となり、再開した出荷でも不安定な状況が続いている。

グリコの上期決算は利益半減…長引くシステムトラブル原因究明で一部製品は今も出荷停止中(重道武司)

【経済ニュースの核心】

「はるか昔の記憶が蘇りましたよ」。製菓業界首脳OBのひとりがこう振り返る。1984年から翌85年にかけて関西を主舞台に繰り広げられた「グリコ・森永事件」ーー。犯人グループによって大手食品メーカーが次々と脅迫され、金銭を要求された事件で、なかでも「被害が最も大きかった」(関係者)とされるのが、事件の名称にもなっている江崎グリコだ。創業家出身社長(当時)が誘拐されたうえ、青酸入りの菓子をバラまかれた。

 スーパーなど小売店の棚からはグリコ製品が消え、工場は操業を停止。経営は危機的状態に陥り、パートなど多くの従業員がリストラを余儀なくされた……。

 それから約40年を経た先週末に江崎グリコが開示した今年12月期の上期(1~6月)決算。その中身を見て、この首脳OBは思わず事件を想起してしまったというのである。「プッチンプリン」をはじめとする主力の洋生菓子類が4月から出荷停止に追い込まれ、業績が急降下していたからだ。

 賞味期限が切れた商品の廃棄損など計56億円の特損計上を迫られ、最終利益は36億円と前年同期から半減した。6月下旬以降、順次出荷を再開しているが、一部製品は今もストップしたまま。通期の最終利益は110億円(前期比22%減)という期初の見通しを据え置いたものの、「予断は許さない」(市場筋)。

 もっとも今回の出荷停止は“毒入り菓子”が原因ではない。システムトラブルだ。今春、調達や出荷などを一元管理する基幹システムを刷新したところ、実際の製品在庫とシステム上の在庫数が合致しないなどの障害が発生してしまったのだ。トラブルが何に起因するのかは「究明中」(グリコ幹部)で、まだよくわかっていないという。

■340億円投じたシステム刷新が…

 グリコはこのシステム刷新に340億円もの巨費を投じてきた。本体の管理部門や営業部門だけでなく、情報システム子会社なども動員され、外部のITコンサル会社も入れられた。まさに「グループ総出のプロジェクト」(同)だったらしい。それが稼働早々いきなりダウンしたことになる。

「出荷停止の間、小売店の棚は競合品に奪われた。再開したからといって陳列まで元に戻るとは限らない。システムの減損リスクもはらむ」。社内では先行きに対する不安の声がくすぶり続けている。

(重道武司/経済ジャーナリスト)