【まるも亜希子の「寄り道日和」】杉並区でグリーンスローモビリティに乗ってみました

AI要約

観光庁が取り組むオーバーツーリズム対策の一環として、東京の杉並区で実証運行中のグリーンスローモビリティを体験しました。

グリーンスローモビリティは、低速で周回する電動車両であり、観光客の一極集中を防ぐために場所の分散が期待されています。

乗車体験の結果、暑い日でも専用扇風機がついており快適であり、地元の歴史や見どころを案内するアナウンスもありました。

【まるも亜希子の「寄り道日和」】杉並区でグリーンスローモビリティに乗ってみました

 近ごろなにかと問題になっているオーバーツーリズム。この夏、出かけた観光地でその片鱗を感じる機会がありました。日本では観光庁が2018年に「持続可能な観光推進本部」を立ち上げ、オーバーツーリズムに対する取り組みを行なっていますよね。その取り組みの1つとして、「時間」「場所」「季節」の3つを分散させることで、観光客の一極集中を防ぐことが挙げられますが、中でも「場所」の分散に関して期待されている新しい乗り物が、グリーンスローモビリティ。速度20km/h未満の低速で、主に決まったルートを周回する小型の電動モビリティなんですが、調べていたら東京でも運行中のところがあると知り、さっそく乗りに行ってみました。

 杉並区が今年8月まで実証運行中で、11月から本格運行を予定しているグリーンスローモビリティで、荻窪駅が発着場所。停留所がちょっと小さくて分かりにくく、10分くらい迷ってしまいましたが、見つけました! 2種類の運行車両があるそうで、その日はヤマハAR-07という3列シートのゴルフカートみたいな車両です。運転席を除くと最大乗車人数は5名で、もう1台、中国製のタジマNAO-6Jという超小型バスのようなタイプがあって、そちらの乗車定員は7名となっています。今のところ運行時間は9時30分~17時までで、1周約15分程度の周回コースを走ります。平日や土日・祝日などでダイヤが変わり、12~24便くらいまであって、この時は停留所は4か所でしたが、本格運行時には5か所に増える予定とのことでした。

 朝一番の便に乗ったのですが、すでに外気温30度超。シートは屋根があるもののオープンエアなので、暑そうだな~と覚悟したのですが、1席ずつ専用の小型扇風機が備え付けてあって、風がしっかり届くので耐えられないほどの暑さではないですね。運転手さんの「出発しまーす」という声とともに、グリーンスローモビリティが静かに走り出しました。

 20km/h未満というと、一般道の流れの中ではものすごく遅いんじゃないかとイメージしてましたが、通るのは市街地の細い道がほとんどなので、そんなに遅いとは感じないんですね。むしろ、シートベルトもヘッドレストもドアもない状況なので、これくらいが安心感があっていいかなと思いました。スピーカーから、停留所ごとにその場所の歴史や見どころなどがアナウンスされて、「へ~知らなかった~」なんて聞き入ってしまいます。地元密着型の乗り物という感じでいいですよね。

 この時はまだ朝一番だったこともあって乗客は私だけでしたが、お昼くらいになるとお年寄りを中心に駅前への買い物や通院などに利用する住民が増えるそう。杉並区の場合はオーバーツーリズム対策というよりは、住民の足としての利用も兼ねる割合が大きいようですね。荷物置き場がないので、バッグは抱えて乗ることになり、スーツケースなど大きな荷物を持って乗りたい場合はその場の判断になりそうです。

 また荒天の場合は運休になることもあり、雨の日はビニールカーテンのようなものを垂らして雨よけにして運行するそう。「ペットも一緒に乗れますか?」と聞いてみたら、まだそういう細かな議論はこれからで、ペットを連れて乗車した事例もないのですが、今のところダメという決まりはなく、抱きかかえて乗れてほかの乗客の迷惑にならなければOKになるのではないか、とのことでした。

 実証運行中の運賃は1回100円。これは前回の実証運行の際に「いくらなら乗りたいですか?」とアンケートを取って決めたとのこと。本格運行ではどうなるのか気になります。ただ、福祉関係の仕事をしている人に話を聞くと、免許返納をした人や日常の足がなくて出かけるのが不便な人たちにとっては、無償のサービスというのは「誰かに迷惑をかけている」「助けてもらっている」ことを負担に感じてしまう人が多く、それがイヤで利用しなくなり、結局はサービスが成立しなくなる事例もあるのだとか。それなら、1回100円でもちゃんと代金を支払ってサービスを利用する方が、気持ち的にラクで利用しやすいというケースもあるとのこと。このあたりもしっかりと住民の声を拾って、ぜひ身近な移動サービスとして根付いていってほしいと思いました。