参入を表明していた大手にも見離され…「大阪カジノ」は本場・マカオの脅威に全くならない「悲しい現実」

AI要約

アジアの新興カジノ市場の現状と将来展望について解説。マカオに次ぐ存在感を見せるシンガポールやフィリピン、新たなIR開発計画の進行、そして日本のカジノ参入にまつわる動きなどを取り上げる。

日本のカジノ解禁を巡る動きについて。インバウンド旅客誘致の一環としてのIR導入計画や国際カジノ企業の参入競争、そしてMGMを除く企業の脱落などに焦点を当てる。

日本におけるカジノ事業のハードな要求が事業者とのミスマッチを引き起こし、競合国であるタイに注目が移る可能性について考察。日本にふさわしい高水準のIR実現を目指す必要性が示唆されている。

参入を表明していた大手にも見離され…「大阪カジノ」は本場・マカオの脅威に全くならない「悲しい現実」

目下、マカオは圧倒的な世界一のカジノ売上(カジノ粗収益=Gross Gaming Revenue)を誇り、絶対王者として君臨しているが、近年はフィリピンやシンガポールといった新興カジノ国が相次ぎ登場し、その存在感を高めている。

【前編】『日本の“カジノ参入”の鍵を握るのはタイだった…入札第2ラウンドで惨敗する可能性も』に引き続き、アジアの新興カジノの今後の展望について解説する。日本は第1ラウンドとして、まず3都市にIRを設ける予定だったが、実際には大阪のみしか目処が立っていない。今後、第2ラウンドの入札を実施するのかどうかが争点になる。

目下、アジアにおいてマカオに次ぐカジノ市場となっているシンガポールやフィリピンでは、既存IRの拡張及び新規IRの開発計画が存在する。韓国にもいよいよ米国系のモヒガンによる本格的なIR「インスパイア」が登場した。

また、日本、タイのほかにも、アラブ首長国連邦がカジノ解禁を検討しているという報道もある。

現時点ではアジアのカジノ市場は拡大中といえるが、地域内での淘汰も進むであろうと予想される。とはいえ、世界のカジノ市場を俯瞰して、今後アジアのプレゼンスが高まることは必至で、世界中から大きな脚光を浴び続けることだろう。なお、ランドカジノ以外のゲーミング、例えばスポーツベッティングやオンラインゲーミングについては依然として欧米が強い。アジアにおけるこういった分野の発展にも注目される。

筆者は10年以上にわたってマカオに拠点を置いてカジノ業界を含む広くマカオ経済・社会・ツーリズム業界等の取材を行う日本人の記者だ。日常生活、業務においてカジノ・IRは自身にとって身近な存在で、その地域社会との関わり等も含めて、おそらく日本人の中では最も詳しい部類に入ると自負している。だからこそ、祖国である日本のカジノ解禁実現に向けた動向が非常に気がかりだ。

日本はインバウンド旅客誘致の切り札としてカジノを含むIRの導入を検討するようになったとされている。そして、日本におけるカジノ経営権獲得を目論み、規模の大きなIRの運営実績のある米国やマカオの主要カジノ企業がこぞって名乗りを挙げた。冒頭にも書いたが、世界のカジノ企業から見た日本はアジア最後のフロンティアだったはずだった。

日本人目線では理解しにくいが、海外から見れば公営ギャンブル、公営くじ、パチンコ・パチスロなどが広く国民の娯楽と一種として定着している日本のギャンブル市場規模は非常に大きく(註:厳密にいうとパチンコ・パチスロはギャンブルではなく「遊技」にあたる)、魅力的に映るらしい。しかし、結果的はMGMの1社しか残らなかったわけだ。これによって、日本唯一の候補地となった大阪では、選ぶ側ではなく選ばれる側であるMGMの立場が強くなり、本末転倒の状況となっている。

なぜ、MGM以外の国際メジャー運営企業が撤退することとなったのか。つい先日マカオで開催された国際ゲーミングエキジビション「G2Eアジア2024」の会場で業界関係者の話を聞くなどして自分なりに咀嚼したところ、ミスマッチが発生していたのではないだろうか。日本側としては、本格的なIRがほしかったはずだ。

そして、日本は世界に誇る観光資源を有しており、それを日本に持ち込める大手がこぞってやって来ると信じていただろう。

一方、事業者の見方はシビアだ。自信たっぷりの日本側が出してきたハードな要求が事業として成立しないと受け止められた事になる。かつて日本に参入を表明していた大手は今、タイに熱視線を送っている。

日本としては、入札第2ラウンドの実施の有無を未だ表明していないが、第1ラウンドの反省点をしっかりまとめ上、新たな競合としてのタイの出現についても研究すべきであり、何はともあれ事業者目線で考えることが必要ではないだろうか。

マカオで世界一流のIRに囲まれている自分としては、せっかく日本にもIRができるのであれば、中途半端なものでは恥ずかしいという思いがある。日本人として、世界に誇る日本らしいIRをぜひ実現してもらいたい。