スタートアップ株の弱点、業種や国籍の“多様性”を欠いたグロース市場の低迷

AI要約

世界の株価急落により、東証グロース市場のスタートアップ企業が影響を受けている。

小粒なIPO銘柄や株価下落が課題となり、人気不足も顕著。

東証グロース市場とNASDAQの時価総額データから、両市場の厚みの違いが浮かび上がる。

東証グロース市場の目標と上場基準、維持コストについて詳細を解説。

一方、NASDAQも入り口のハードルは高くないが、維持費用に大きな差がある。

投資家のバリュエーション信頼、東証グロース市場の株価下落差異、IPO企業の厚み違いの分析。

日本の新興市場の課題やスタートアップ企業の現状に注目が集まっている。

スタートアップ株の弱点、業種や国籍の“多様性”を欠いたグロース市場の低迷

世界的に、株価の急落が話題になっている。

株安の影響をより強く受けているのが、スタートアップ企業が多く上場している東証グロース市場だ。そもそも日本の新興市場については、これまで多くの課題が指摘されてきた。新規公開株式(IPO)銘柄は、時価総額が数十~数百億円程度と「小粒」という批判もその一つだ。

スタートアップ企業が何とか上場までこぎつけても、初値を最高値に、以降は株価が下がる一方というケースも最近は珍しくない。

また東証グロース市場は取引金額も小さく、せっかく値上がりで含み益が出ても利益確定が難しいという事情もある。これでは、上場からしばらく経った銘柄は人気が出ないのは当然だろう。

7月31日の日銀の利上げに端を発した世界的な株価の暴落下では、東証グロース市場指数が8月7日までに15%下落しているのに対し、アメリカのNASDAQ総合指数の下げ幅は6%にとどまった。こうした動揺の違いも、投資家のバリュエーションに対する信頼関係に起因すると言っていい。

では、その違いはどこから来るのだろうか。

まずはデータを見てみよう。金融・経済情報サービスのQUICK、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)のデータを基に、2023年に東証でIPOした92社、NASDAQで上場した239社の、現時点における時価総額を分析した(1ドル=152円換算)。

この中で注目したいのが、時価総額の最大や最小の金額は日米でそれほど違いがないが、平均や中間値が大きく異なるということだ。

時価総額の大小は、大型のIPOをした企業や株価低迷した企業があれば同様の水準になり得るため納得できる。ただ、平均や中間値が大きく違うことは両市場におけるIPO企業の厚みの違いを示すものであり、やはり日本のIPO銘柄は小粒であると言えるだろう。

日本では、スタートアップ企業がまず目指すのは東証グロース市場だ。

東証グロース市場は1999年、「上場基準を緩和し、成長性が見込まれるベンチャー企業などに、株式上場による資金調達の場を提供する」ことを目的として開かれた(当時の名称はマザーズ)。グロース市場の上場基準に照らし合わせると、時価総額は20億円が最低ラインだ。

東京証券取引所が公表している2024年6月におけるグロース市場574社の株価収益率(PER)の単純平均は45.4倍なので、逆算すると4400万円の当期利益があれば、この基準は達成出来ることになる。

一方で、NASDAQも入り口のハードルはそれほど高くない。小型株を対象としたナスダックキャピタル・マーケットでは、株主資本や利益条件は加わるものの、浮動株時価総額は約7.6億円(1ドル=152円で換算)が最低条件だ。

両者の大きな違いは上場維持コストにある。

東証グロースでは、年間上場料として時価総額が50億円以下の場合、TDnet 利用料12万円を加算して60万円の費用がかかる。

一方NASDAQの場合、発行株式総数が1000万株未満で現在の為替水準で750万円程度の費用となる。

さらに開示資料の作成費用で別途年間3000万円から4500万円程度の費用が掛かるとされており、これらが上場を維持するためのハードルになっていると言える。