新油市場310億円、「サプリ的オイル」需要拡大

AI要約

サプリ的オイルの需要が拡大しており、植物油全体の価格高騰が続いている中、新たなオイル市場が拡大している。

米油やMCTオイル、アマニ油、シソ・エゴマ油などが人気であり、特に米油やMCTオイルの売上が急増している。

アルガンやカメリナなどのネクストオイルも新たな展開が見られ、植物油市場全体が活況を呈している。

 「サプリ的オイル」の需要が拡大している。植物油全体は、世界的な原料価格高騰の影響が続き、大手各社による段階的な価格改定が続いている。こうした中、米油やMCTオイル、アマニ油、シソ・エゴマ油を中心とした「新油」の市場が拡大。国内外で好調な米油やMCTオイルは2ケタ増と好調なほか、アマニ油についても5月のTV報道を受け、日常生活に新たに取り入れる消費者が急伸している。高級オイル「アルガン」や、加熱調理に適した健康オイル「カメリナ」などのネクストオイルでも新たな展開がみられる。

■植物油の原料高騰影響続く

 植物油市場では、バイオディーゼル向けなど世界的な食用油需要の増大、北米、南米、欧州など原料生産国の天候不順等に加え、37年半ぶりの円安水準を更新し加速している円安による原料調達コストの上昇、ロシアのウクライナ侵攻による穀物需給不安の高まりなども影響し、かつてない世界的な原料価格の高騰が続いている。

 農水省「令和5年植物油脂の油脂(原油)生産量及び在庫量」によると、2023年の植物油脂の生産量および在庫量の合計は155万トン(前年比4.4%減)、うち輸入は148万トン(同4.8%減)を占める。

 大手各社では、家庭用、業務用ともに安定供給を前提とした食用油の段階的な価格改定を実施。食用油最大手の日清オイリオグループやJ-オイルミルズではこのほど、2024年10月1日納品分からの価格改定をリリースしている。

 こうした中、「美味」「健康」「機能」を切り口としたサプリ的オイルの需要は着実に高まっている。日清オイリオグループの定点調査(「インテージ社SCI-pデータをもとにした日清オイリオグループ推計」)によると、アマニ油、エゴマ・シソ油、米油、MCTオイルを中心とした「新油」の2023年度の売上高は約310億円(前年比3.3%増)に。

 内訳をみると、アマニ油65億円(前年比15%減)や、シソ・エゴマ油28億円(同24%減)などが苦戦する中、米油176億円(同10%増)や、MCTオイル34億円(41%増)が2ケタ増と大幅に伸びている。

 日清オイリオでは7月、機能性表示食品「日清MCTオイルHC」に新たなヘルスクレーム「BMIが高めの方の日常活動時の脂肪の燃焼を高める」を追加。従来からのヘルスクレームである「BMIが高めの方の体脂肪やウエスト周囲径を減らす」とともに、Wヘルスクレーム商品としてリニューアルした。「既存のマヨネーズやドレッシングソースとともに、幅広いレシピ提案等で消費者への普及拡大に力を入れていく」という。

 サプリ的オイルを牽引するアマニ油にも新たな兆しが出ている。アマニ油は、日本市場におけるパイオニアのニップンをはじめ、日清オイリオグループ、J-オイルミルズ、キユーピーなど大手各社よりドレッシングやマヨネーズ、サプリメントなどさまざまな形態で商品が展開されている。

 5月にNHK「あしたが変わるトリセツショー」で取り上げられて以降、日常食に新たに取り入れる消費者が急増しており、「数か月分の在庫が数日で売れた」「商品注文が殺到し、以前のブームの再現のよう」といった声がある。

 機能性表示食品では、α-リノレン酸を機能性関与成分に、血圧対策、LDL(悪玉)コレステロール対応などで受理されている製品群が中心。ニップンでは、「アマニ習慣」「アマニ油プレミアムリッチ」「たまねぎドレッシング アマニ油入り」「アマニ油効果」など複数の商品が機能性表示食品として受理されている。J-オイルミルズは肌の保湿力と潤いキープを訴求した初の機能性表示食品「AJINOMOTO 毎日アマニ油」を展開している。

■国内外で躍進続く米油

 米油は、原料の米ぬかに含まれるγ-オリザノールの抗酸化作用や血中コレステロール低下作用とともに、オメガ9系脂肪酸(オレイン酸)が豊富で耐熱性が高く、油切れの良いアレルギー・グルテンフリー油として国内外で需要が拡大している。

 海外市場からは、日本発のボタニカルオイルとして評価が高く、主に揚げ油として幅広く採用されている。サプライヤーは、オリザ油化や築野食品工業など。オリザ油化は、1939年より米油の抽出精製事業を手掛けるパイオニアメーカー。海外米油の安定的な調達、海外への販売戦略強化に力を入れている。昨年12月には機能性表示食品「オリザの米油 機能性表示食品」も発売している。

 築野食品工業では、米糠由来の食品・化粧品原料、各種「こめ油」等を展開。5月9日には、米由来の天然成分であるγ-オリザノールを機能性関与成分とする中性脂肪・コレステロール対応の機能性表示食品「体にうれしいこめ油」を発売した。

■ネクストオイルでも新展開

 アルガンやカメリナなどネクストオイルの提案も進んでいる。ニュートリション・アクトでは、モロッコ王国「タルガニン生産協同組合」日本総販売元として食品や化粧品に使用可能な高級アルガンオイルが順調だ。伝統的製法で100kgから1Lしか作れない稀少性や、豊富なエビデンスとストーリー性などが市場に定着し、ヘアケア用途の新製品開発やサプリメントでの新規採用などが増加。「最近では、食用向けのローストタイプの引き合いも増えている」という。

 創健社では、アブラナ科の植物・カメリナサディバを原材料とした「カメリナオイル」を提案。加熱安定性を保つ植物性ステロールやオメガ9系脂肪酸(オレイン酸、エイコセン酸)を含有し、加熱調理に適したオイルとして、新たに医師と共同開発したドレッシングなど新たな商品も上市した。ロングラン商品では、上市34周年の「えごま一番シリーズ」があり、幅広いアイテムを取り揃えている。

 えごま油では、国内食用化のパイオニアである太田油脂が2月、α-リノレン酸による血圧に関する機能性表示食品を2品新たに上市し、ドラッグストアやスーパー向けの提案に注力している。さらに「北海道産シリーズ」として、えごま、アマニ、菜種を新たに上市。インバウンド需要の取り込みや国産志向の消費者向けに提案を強化していく。