創業のきっかけは娘の難病、トランス女性起業家が目指す未来

AI要約

トランスジェンダーのCEOであるマーティン・ロスブラットは、娘が肺動脈性肺高血圧症(PAH)と診断されたことをきっかけに、バイオテクノロジー企業を立ち上げた。

30年後、娘は健康で30代を迎え、同社は株価が54倍に上昇している。

ロスブラットは自力で成功を収めた女性ビリオネアの一人として認められており、遺伝子操作されたブタの臓器の移植などの取り組みも進めている。

創業のきっかけは娘の難病、トランス女性起業家が目指す未来

米国で最も著名なトランスジェンダーのCEOであるマーティン・ロスブラットは、1996年に当時6歳だった自身の娘が、肺と心臓の難病の肺動脈性肺高血圧症(PAH)であることを医師から告げられた。

その3年前に、衛星ラジオのシリウス・サテライト・ラジオを上場させて財を成したロスブラットは、この病気の治療法を見つけることを目標に、自身のバイオテクノロジー企業を立ち上げた。「娘が死ぬと言われることほど辛いことはない。私は、なんとしてでもこの病気の治療法を見つけようと思い立った」と、彼女は以前のフォーブスのインタビューで述べていた。

それから約30年が経った今、ロスブラットの娘は健康で30代を迎え、彼女が立ち上げたユナイテッド・セラピューティクスの株価は、1999年のIPO(新規株式公開)当時の価格の54倍に上昇している。同社の株価は、今年の年初から50%近く上昇しており、ロスブラットはビリオネアの仲間入りを果たした。

メリーランド州を拠点とするユナイテッド・セラピューティクスは、昨年21億ドル(約3041億円)の売上を上げ、その多くはロスブラットの娘のようなPAHの患者の治療に役立つ5つのFDA承認薬の販売によるものだ。最も収益に貢献したのは、タイバソと呼ばれる新薬で、前年比41%の収益増を記録した。

現在69歳のロスブラットは、今では時価総額が147億ドル(約2兆3000億円)に達した同社を設立以来CEOとして率いてきた。彼女はまた、子会社のRevivicor(リヴィヴィコール)を通じて、遺伝子操作されたブタの臓器を、末期の腎臓病や心臓病を持つ人々に移植するための取り組みを進めている。

保有資産が10億ドル(約1448億円)を突破したロスブラットをフォーブスは、米国で35人しか存在しない自力で成功を収めた女性ビリオネアの一人と認めている。

■波乱に満ちた半生

ロスブラットのビリオネアへの道は、波乱に満ちたものだった。1954年にサンディエゴで生まれた彼女は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に在学中に、音楽に没頭し、ピアノやフルート、ドラムを演奏しながら国中をヒッチハイクした。その後、セーシェル諸島で衛星の施設を見学した際に、衛星ネットワークを使って世界中のリスナーに音楽を送るというアイデアに取り憑かれ、米国に戻ってUCLAで法学の学位とMBAを取得し、通信法の弁護士として働いた。

1990年に彼女は、車載向け衛星ラジオ放送の先駆けであるシリウス・サテライト・ラジオを共同創業し、1993年のIPOを主導した。その3年後に、娘がPAHと診断されたロスブラットは300万ドル(約4億3000万円)相当の同社の株を売却し、治療法を見つけるために医師に資金を提供した。