「コロナワクチンは必ず《午前中》に接種しなさい」時間治療学の名医が提言…コロナ再流行のいま知りたい、ワクチン効果を高めるタイミング

AI要約

高血圧治療における降圧剤の服用タイミングについて、従来の常識が変化しつつある。

体内時計を活用した治療やクスリの適切な服用タイミングが重要であることが指摘されている。

特定のクスリ、例えば骨粗しょう症治療薬やステロイド剤の朝の服用時期について具体的な理由が紹介されている。

「コロナワクチンは必ず《午前中》に接種しなさい」時間治療学の名医が提言…コロナ再流行のいま知りたい、ワクチン効果を高めるタイミング

「降圧剤は朝のうちに飲んだほうがいい」。高血圧治療の現場では、それが最近まで当たり前の知識として受け入れられてきた。しかし、さまざまな研究が進んだ現在、「常識」がひっくり返されつつある。

金沢大学教授の安藤仁氏が指摘する。

「一般的に早朝になると、体を覚醒させて活動を始めるために、血圧が夜間低下していたところから急激に上昇します。この『モーニングサージ』が著しい場合には、脳卒中になりやすいことが知られている。

したがって起床時に血圧が高い高血圧の患者さんは、夜のうちに降圧剤を飲んでおいて、起きた直後に血圧が上がりすぎるのを防ぐことが重要なのです。朝起きてから降圧剤を飲んでも、急上昇には対処しきれません」

医学の発展は日進月歩。研究が進み新たな知見が増えれば、いつも飲んでいるクスリの飲み方も変わっていく。何も知らずに漫然と飲み続けていては、せっかくの薬効も薄らいでしまうだろう。最先端の研究成果を参照しながら、「クスリの見直し」を進めたい。

人間には約24時間の周期で時を刻む「体内時計」が備わっている。朝には自然に目が覚めたり、昼になるとお腹が空いたりするのは、体内時計が適切な行動を取るタイミングを教えてくれるからだ。

同じく、体内で起こるさまざまな生理現象や病気の症状、進行具合さえも、体内時計の影響を受けて、約24時間周期の決まったリズムで変化する。その考え方を治療に取り入れた「時間治療学」のメリットを強調するのは、自治医科大学名誉教授の藤村昭夫氏だ。

「一部のクスリには、ベストな服用タイミングがあるとわかってきました。たとえ同じクスリを飲むにしても、時間治療学の知見を参照して適切な時間に服用すれば、効果をより高めたり、副作用のリスクを小さくできたりするわけです」

普段から飲んでいるクスリの飲み方も、時間治療学に基づいた「最適な時間」にあわせれば、見違えるような結果をもたらしてくれる。

朝に服用すべきクスリの一つが、アクトネルなど骨粗しょう症の治療薬だ。山陽小野田市立山口東京理科大学教授の牛島健太郎氏が解説する。

「骨粗しょう症の治療では、骨の新陳代謝を促す『破骨細胞』の働きを抑え、骨密度を増やすビスホスホネート(BP)製剤がよく使われます。ただBPはそもそも体に吸収されにくいうえ、胃に食べ物がある状態だとほとんど吸収されないため、食後や日中では効果が十分に得られない。最大限の効き目を期待するならば、起床してすぐに飲まなければいけません」

免疫系の疾患で使われるステロイド剤も、朝に服用するのが医師の間では常識だが、知らない患者は多い。

「明け方になると副腎皮質からコルチゾールというステロイドホルモンが分泌されて、人間は朝がやってきたことを認識します。しかしこのコルチゾールに似た働きを持つステロイド剤を昼や夜に服用すると、体が『朝が来たのではないか』と誤解して覚醒し、不眠症になってしまう」(牛島氏)