《喪失不安の恐怖》「君の将来を思って」と言いつつ「過大なノルマを押しつけるヤバい上司」の病理

AI要約

上司が部下に過大なノルマを押しつけ、自己保身を図る様子が描かれている。

上司の行動は部下の人間関係や経済面に影響を及ぼし、職場全体に腐敗をもたらす可能性がある。

上司の行動には強い承認欲求や自己保身の要素が潜んでおり、部下のためと偽りつつ、実績を上げようとする姿勢が窺える。

《喪失不安の恐怖》「君の将来を思って」と言いつつ「過大なノルマを押しつけるヤバい上司」の病理

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

〈保険会社の40代の男性上司は、部下を別室に呼びつけて「君の将来を思って言うんだが……」という枕詞を吐いた後、過大なノルマを押しつける。この上司は、現状を見れば達成できるとは到底思えない数字を示し、「これだけの契約を取ってくれば、上からの君の評価はうなぎ登りで、賞与にも反映されるし、今後も安泰。昇進できるし、給料も上がる。本当に君のためになるんだぞ」と熱っぽく言うそうだ。

この上司が示すノルマは、まっとうな営業活動だけでは達成が無理そうな数字なので、部下の多くは家族や親戚、友人や知人などに保険への加入を懇願するらしい。とはいえ、どうしても限界がある。周囲の人に一通り保険に入ってもらったら、それ以上は頼みにくい。それでも、ノルマがあるからと、保険への加入をさらに懇願していたら、関係悪化につながりかねない。実際、周囲との関係が気まずくなったり、疎遠になったりした部下もいるようだ。

そういう事態を避けるためか、なかには保険料を肩代わりしている部下もいるらしく、経済的な自己犠牲を伴う営業、いわゆる「自爆」営業によって取れた契約がかなりの割合を占めているのが実態だという。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

この令和時代にも、「過大なノルマを部下に押しつける上司」というのは存在する。

では、なぜ過大なノルマを押しつけてしまうのか。

『職場を腐らせる人たち』では、「根底には、上司の強い承認欲求が潜んでいるように見える。何としても実績をあげて、上層部から認められ、昇進したいという執念のようなものさえ感じる。そのためには、それこそどんなことでもするという姿勢であり、部下に過大なノルマを押しつけ、それを達成できるようにあの手この手で誘導する」と分析している。

〈巧妙なのは、決して暴言を吐くわけではなく、「君の将来を思って」「君のため」といった言葉を頻用し、あくまでも部下のためを思っているかのようなふりをすることだ。これは、万一部下からパワハラで告発されるような事態になれば、昇進どころか、降格さらには解雇の憂き目に遭いかねないので、用心しているからだろう。

常に自己保身のための計算が働いているわけで、部下がノルマを達成できるように保険の積み増しを依頼する顧客のリストまで上司が自分で作成する"親切ぶり"を示すのも、同じ理由に違いない。

この上司のような自己保身の塊は、部下が「自爆」営業に手を染めようが、心身に不調をきたそうが、知ったことじゃないという姿勢になりがちである。これは、現在の地位から転がり落ちるのではないかという転落への恐怖、そして肩書や収入など、自分にとって大切なものを失うことへの不安、つまり喪失不安が強いせいかもしれない。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。