「安くておいしい」「奇跡的な脂乗り」夏のカツオが豊洲で注目の的

AI要約

カツオの水揚げが好調で値下がりしている。今年は脂が乗った魚が増え、身質の評価も高く人気を集めている。

宮城県気仙沼港では、カツオの水揚げが急増。脂が乗る前の赤身が特徴の夏カツオが豊富に漁獲されている。

水温が高い海域で餌が豊富でカツオが浅いところで食べており、脂が乗りやすくなっている可能性がある。

「安くておいしい」「奇跡的な脂乗り」夏のカツオが豊洲で注目の的

 カツオの水揚げが好調で値下がりしている。夏のカツオは例年、脂が少なくあっさりとした味わいが特徴だが、今年は早くも脂が乗った魚が増えている。身質の評価も高く、小売店などで人気を集めている。(時事通信水産部 岡畠俊典)

◆1日で1000トン以上も

 主産地の宮城県気仙沼港では、8月に入ってカツオの水揚げが急増している。今月1~8日の水揚げ量は約5800トンと、前年同時期の約2.6倍。前年同月の1カ月間(約4300トン)を上回っている。1日だけで1000トン以上取れる日もあり、同県気仙沼漁業協同組合の臼井靖参事は「短期間でここまで豊漁なのは記憶にない」と驚きを隠さない。

 夏に取れるカツオは、身に脂が乗る前の、弾力のある赤身が特徴。秋になると脂を十分に蓄えて太った「戻りガツオ」が三陸沖で漁獲される。ところが、今年は早くも6月ごろから「珍しく脂が乗った魚が多く取れている」と臼井参事。戻りガツオの漁は例年9~11月ごろに本格化するが、その前に脂が乗るのは異例という。

 漁業情報サービスセンターによると、今年は「暖水渦」と呼ばれる水温が高い海域付近の三陸沖に形成されている。餌が豊富にあるとみられ、既に日本近海を北上して漁場にとどまっているカツオに加え、同センター担当者は「後から上ってきた群れが追加されているのではないか」と説明する。

 同センター担当者は、カツオが漁場周辺で深く潜らず、水温の高い海面付近など浅いところで動物プランクトンなどを食べていると推測。運動ができずに代謝が低下し、脂が乗りやすくなっていることも一因とみている。

◆「安くておいしいカツオ」豊洲も注目

 好調な水揚げを受け、東京・豊洲市場(江東区)にも宮城県産が連日多く入荷している。同市場8月上旬の卸値は、1匹3~5キロサイズの中心値が1キロ当たり500円前後と、前年同月の同市場平均価格に比べて2~3割下落している。

 豊洲市場で高級すし店などにカツオを卸す仲卸業者「水音水産」の吉住晃統括本部長は、「真夏なのに、戻りガツオに近い奇跡的な脂乗りが続いている。新鮮で赤身とのバランスも良い」と品質に太鼓判を押す。すし店をはじめ飲食店からの需要が高いほか、都内でも刺し身用さくなどを手頃な価格で特売するスーパーなどが増えている。

 スルメイカやサンマなどが深刻な不漁に見舞われているほか、水産物をはじめ食料品全体の価格も上がっている中、「安くておいしいカツオ」(同市場関係者)は豊洲でも注目の的だ。吉住統括本部長は「もっちりとした軟らかい身で、脂に甘みもある。刺し身などでカツオ本来の味を楽しんでほしい。からしや酢じょうゆで食べるのもお薦め」とアピール。気仙沼漁協の臼井参事も、秋に向けて「この状況が続いてほしい」と期待している。