《歯科治療「自費診療」の落とし穴》有効性が証明されていない治療も横行 “自費診療の枠でやる限りには規制されない”制度上の問題も指摘

AI要約

歯科治療における杜撰な自費診療の実態と問題点について報告されている。

高額な自費診療に誘導されるケースもあり、根拠のない治療法が広がっている現状を明らかにしている。

医療の世界では常識とされる臨床試験や有効性の確認が欠如し、患者の選択に注意が必要であることを示唆している。

《歯科治療「自費診療」の落とし穴》有効性が証明されていない治療も横行 “自費診療の枠でやる限りには規制されない”制度上の問題も指摘

 毎日の生活に欠かせない「歯」のケアの大切さは説明するまでもないが、歯のトラブルに見舞われた時に頼る歯科治療の現場で、杜撰な治療が行われる実態があるという。時には自費診療を進められるケースもあるが、選択には注意が必要だ。『やってはいけない歯科治療』の著者で、“歯科業界に最も嫌われるジャーナリスト”の異名を持つ岩澤倫彦氏(ジャーナリスト)がレポートする。

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 過当競争で歯科医院の経営環境が苦しくなり、セラミックやインプラントなど、高額な自費診療に誘導されるケースが見られるが、有効性が証明されていない自費診療も広がっている。根拠のない“エセ歯科治療”でも、歯科医の裁量で行なう自費診療の枠でやる限り、現行法では規制されないという制度上の問題があるからだ。

 本来、新たな治療法や医薬品は、まず臨床試験の結果を研究論文として公表するものだ。そして国の審査や第三者の検証を受け、有効性が確認されてから、ようやく患者に広く使えるようになる。これは医療の世界では常識だ。理にかなっているようでも、実際に使ってみたら“効かなかった治療”は山ほどあるので、注意しなくてはならない。

 おかしな自費診療を受けた患者の再治療を担った歯科医、その分野の権威である歯科医からも、疑問の声があがっている。神戸で開業している歯科医の高田光彦氏(高田歯科・院長)のもとを訪れた患者は、他院で「ドックベストセメント」という虫歯治療を受けたが、ずっと強い痛みが続いていると訴えた。

 高田氏がその歯に詰められた白いセメントを除去すると、虫歯菌に感染して柔らかくなった象牙質が現われた。これまでこの治療を受けた患者を何度も受け入れたが、いずれも同様の状況だったと高田氏は言う。

「この治療法についての医学論文を探しましたが、信頼できる論文は見つかりませんでした。でも、メディアが良い虫歯治療として取り上げるので、患者さんも信じてしまうようです」