宇都宮LRT「快速」乗って分かった“鈍足”のワケ…時短の余地、大いにあり!? 今は2本だけ

AI要約

2023年8月に開業した宇都宮ライトレールは、日本で最も新しいLRT(低床車両での運行を前提とした路面電車)です。栃木県の宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間を結び、利便性の高さが評価されている。

開業以来の利用者数増加に対し、速度向上が求められており、将来的な目標は快速運転による通勤利用者の最短時間運搬。

乗車体験からは、快速の利用客層や、現在の駅通過速度の低さ、将来的な車両のスピードアップ計画が明らかになった。

宇都宮LRT「快速」乗って分かった“鈍足”のワケ…時短の余地、大いにあり!? 今は2本だけ

 2023年8月に開業した宇都宮ライトレールは、日本で最も新しいLRT(低床車両での運行を前提とした路面電車)です。栃木県の宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間の14.6kmを結んでおり、これまで鉄道のなかった地域に建設されました。

 

 バスより定時性が高く、自家用車のように目的地での駐車場が必要ないという利便性の高さが評価され、2024年4月では開業以来最大の42万1000人が利用するなど、順調に利用を伸ばしています。

 その一方で、開業時は全区間を乗り通すと、各駅停車で48分(現在では45分)を要することもあって、速度向上が求められていました。なお宇都宮ライトレールは「最終的には快速運転で37~38分とし、目的地が明確な通勤利用者を最短時間で運びたい」としています。目標とする所要時間から考えて、将来の快速は途中駅の追い越しも念頭に置いていると思われます。

 4月に設定された快速は所要時間42分であり、各駅停車より3分だけ早いことになります。途中6駅を通過するわりには、それほど早くない印象もありますが、どのような利用のされ方をしているのか、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は6月に乗ってみました。

 快速は、宇都宮駅東口駅から平日の朝6時58分発と、7時46分発の2本だけです。ちょうど朝ラッシュ時であり、ホームは乗客でいっぱいです。

 観察して興味深いのは、降りてくる人も乗ってくる人も等しく多いこと。つまり宇都宮駅に向かう通勤客と、芳賀・高根沢工業団地方向に向かう通勤客のどちらも多いということです。

 7時46分発の快速は7時30分に入線しました。外から写真を撮っていた1分のあいだに全席が埋まり、立客も出る乗車率に。側扉付近には全て交通系ICカードリーダーが設置されており、スムーズな乗降が可能です。なお、5月8~17日における快速の平均利用客数は、車両定員の160名を上回り、170~180名と好調とのことでした。

 利用客層はサラリーマンと学生が多く見られました。7時46分に出発した快速は、まずは4駅を通過し、宇都宮大学陽東キャンパス駅に直行します。所要時間は9分ですが、各駅停車は10分なので、「速い」わけではありません。なぜなのか眺めていると、駅の通過速度が15km/h程度と非常にゆっくりなのです。最高速度は40km/hですから元々それほど高速ではありませんが、駅に近づくと露骨に減速するので、すぐわかります。

 この最高速度40km/hは、軌道が「道路」扱いであることに起因しますが、将来的には軌道法の特認を受けて、道路との併用軌道区間で50km/h、鬼怒川を渡る専用軌道区間ではHU300形電車の設計最高速度である70km/hにスピードアップする予定です。

 ちなみにHU300形は3両編成ですが、高速性能や最急勾配67パーミル(1000m進むと67m登る勾配)以上にも対応する高性能電車で、1編成4億3000万円(1両1億4300万円)と結構なお値段。今後の増備編成では1編成7億5000万円(1両2億5000万円)となるそうで、利用好調が続いても増備は難しく感じます。ただ、近年の車両製造価格は高騰しており、例えばJR西日本の新型特急273系電車では、1両約3億6300万円ですから、一般の鉄道車両よりは安いことになります。