《運転手不足に苦しむバス業界》現役運転手が明かす“現場の負担”「70歳でも現役」「土日も休めない」新紙幣導入で新たな問題も浮上…それでも辞められない現実

AI要約

過疎路線や利用客減少により路線バスの廃止や減便が相次いでいる。

大型二種免許を持つ運転手の8割が50代以上と高齢化が進む中、人手不足と労働環境の悪化が深刻化。

運転手確保の難しさや労働条件改善の必要性が喚起されているが、業界全体で解決策は模索されていない。

《運転手不足に苦しむバス業界》現役運転手が明かす“現場の負担”「70歳でも現役」「土日も休めない」新紙幣導入で新たな問題も浮上…それでも辞められない現実

 過疎路線での廃止や利用客減少による減便など、近年各地で路線バスの廃止や減便が相次いでいる。背景にあるのは、ドライバーの確保難や高齢化だ。

 警察庁「令和5年版運転免許統計」によると、路線バスを運転するために必要な大型二種免許を保有している約8割が50代以上と高齢化が進んでいる。さらに今年は労働基準法の改正により交通・運輸業界は時間外労働の上限が厳しくなった。労働環境は改善されるべきことではあるが、物流の量が減るわけではないため、ただでさえ少ない人員にかかる負荷が重くなっているのが現状だ。

 西日本で路線バスの運転手をする西山さん(仮名)は、現在50代。西山さんが勤めるバス会社も人手不足に悩まされているが、「効果的な解決策はない」と諦め顔だ。

「うちの会社では1人が1.5人分ぐらいの業務量をこなしているイメージです。運転できる人がいないので、減便待ったなしです。今は通常の路線バスを優先するため、高速路線を減便して、ギリギリ業務を回している状況です。

 新入社員も採りますが、3、4か月で辞めていってしまうケースが多い。1年続く人が一人いればいい方です。辞める理由の多くは労働に対して給料が見合っていないこと。バスは乗客の安全を預かって運転するという大きな責任が伴う仕事ですが、手取りは15万~20万円弱と“普通”です。

 最近は業界内でも人材確保のために初任給をアップする会社もありますが、別に運輸業界でなくても、世の中的に初任給が上がっている流れの中でインパクトは強くない。わざわざ運転手を選ぼうという人は少ないですよね」(西山さん。以下「」内同)

 西山さんの会社に所属する運転手のうち、20代はほとんどおらず、最年長は70歳を超えている。定年は60歳だが、定年を杉ても会社から「人がいないからまだ続けて欲しい」と懇願され、雇用形態を変えてバスの運転手を続ける人もいる。しかし、西山さんは「最近は高齢者が起こす事故も少なくない。個人的には心配な部分も多い」と漏らす。

「うちの会社では全員といっていいほどの運転手が、土日の休みを取れていないと思います。土日はバスの利用客も多く、総出で対応しないと間に合わない。誰かが怪我や急病になったら、正直もう“詰む”状態です。持続可能な働き方が叫ばれますが、一人当たりにかかる負担は増える一方です」