話題の中国AIロボット「LimX Dynamics」、シリーズAで数十億円を調達 アリババもついに出資

AI要約

中国のスタートアップが二足歩行ロボット製品に資金調達し、アリババ初の投資となる。

LimXは人型ロボットの汎化能力向上に取り組み、マルチモーダルの技術を導入。

人間の動作データを用いた事前学習や強化学習を通じて、人間社会への適応を支援。

話題の中国AIロボット「LimX Dynamics」、シリーズAで数十億円を調達 アリババもついに出資

どんなに押しても蹴っても倒れない二足歩行ロボットの動画が公開され、ネットで大きな話題を集めた中国のスタートアップ「逐際動力(LimX Dynamics)」がこのほど、シリーズAで数億元(数十億円~百数十億円)を調達した。リード・インベスターはアリババグループ、招商局資本(China Merchants Capital)および上海汽車集団(SAIC MOTOR)傘下の尚頎資本(ShangQi Capital)。コ・インベスターは既存株主の峰瑞資本(FreeS Fund)、緑洲資本(Vitalbridge)、明勢資本(Future Capital)。注目すべきはアリババが初めて人型ロボット企業に出資したということだ。

LimXは2022年に設立された。主に等身大の人型ロボット、車輪付き四脚ロボット、二足歩行ロボットなどを手がけ、スマート製造や産業分野の巡回検査、物流・配送、家庭サービスなどの分野で活用されている。今回調達した資金は、人型ロボットの製品化に向けた技術開発に充てられる。

業界でも最初期に空間知能と運動知能を人型ロボットに組み込んだ企業として、LimXが2023年12月に、独自開発した人型ロボット「CL-1」のデモンストレーションを初公開した。24年4月には最新の開発状況を公表し、階段の昇降やランニング、方向転換などの動きを披露した。今後は様々な地形での検証を終えた後、動きの汎用性を高めるため、マルチモーダルの大規模言語モデル(LLM)技術を段階的に人型ロボットに組み込んでいくという。

これまで、人型ロボットの最大の課題は、導入コストが高く、汎化能力に限界があり、特定の場面でしか機能しないということだった。したがって、人型ロボットにとって最も重要なことは、いかにして汎化能力を獲得するかということになる。つまり、ロボットが現実の生活で働いたという経験をベースにして、新しい環境に適応できる能力を作り上げていくということだ。これは人間が過去の生活経験に基づいて新しい生活に適応していくのとよく似ている。

LimXは、は、ロボットに汎化能力を持たせるため、マルチモーダル(身体や力覚、触覚、関節情報など)のLLM技術を段階的に人型ロボットに導入し、一方でロボット本体の汎用性の実現も推し進めている。しかし、人型ロボットの汎化能力を向上させる技術的な手法について、業界内で見解の一致は得られていない。それでも模倣学習や映像を用いた学習など、新しい手法が生まれつつある。

同社は、大量の人間の動作データを用いるという手法を採用、人型ロボットに事前学習を施すことで、人間社会に適応できるようにサポートする。これは3つのステップに分けられる。

1)データスクリーニング:既存のビデオデータから、様々な人間の動きを抽出する。

2)事前学習:データを収集した後、ロボットの基本的な運動能力を、簡単なものから難しいものまでレベル分けし、段階的に事前学習を行う。このプロセスにより、学習結果がコントロールしやすくなり、より優れたパフォーマンスが望める。

3)強化学習:「Real2Sim2Real」のクローズドループを利用し、現実データをシミュレーション環境で継続的に学習・訓練させ、その後、現実世界に戻って学習結果を実証する。シミュレーションと現実を行き来しながら学習を繰り返すことで、両環境におけるギャップを徐々に縮め、ロボットの「脳」にあたる人工知能(AI)が現実世界を理解できるようにする。