公的年金、受給繰下げで「最大184%」に増額できるが…75歳の受給開始で元が取れるのは何歳か?【CFPが解説】

AI要約

公的年金の受給開始には繰上げと繰下げの選択肢があり、2022年に行われた改正で条件が変更された。

繰下げを選択すると毎月の受給額は増えるが、受給開始が遅れるため長生きしないと受給総額が少なくなる。

繰上げは一度選択すると取り消すことができず、生涯減額されるため避ける方が良い場合が多い。

公的年金、受給繰下げで「最大184%」に増額できるが…75歳の受給開始で元が取れるのは何歳か?【CFPが解説】

私たちの定年後の生活を支える公的年金。少しでもお得に受け取るには、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、公的年金の繰下げ受給について見ていきます。本連載は、ファイナンシャルプランナーの福地健氏監修の書籍『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2024-2025年最新版』(インプレス)より一部を抜粋・再編集したものです。

公的年金の受給開始は、原則65歳からですが、希望することで、受給開始を「繰上げ」または「繰下げ」することができます。繰上げの場合は、最大60カ月、60歳まで繰り上げられますが、1カ月あたり0.4%ずつ年金が減額されてしまいます。繰下げの場合は、最大120カ月、75歳まで繰り下げることができ、1カ月あたり0.7%ずつ年金額が増額されます。

この繰上げ・繰下げは、2022年の年金改正で、繰上げの減額率は0.5%から0.4%へ引き下げ。繰下げは70歳から75歳まで拡大され、年金増額率が最大184%に大幅にアップされました。

下記の図表1は、繰上げ・繰下げにより、老齢基礎年金額(満額の場合)が、どのくらい増減していくかを表したものです。例えば75歳まで、繰下げをすると、65歳開始の受給額と比べて年間で、約69万円も受給額がアップ。会社員の場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受け取ることができるので、どちらかのみを繰り下げることもできます。ただし、注意すべき点もあるためきちんと理解した上で、繰下げをするようにしましょう。

一方で、繰上げ受給の場合は、老齢基礎年金も老齢厚生年金も一緒に繰り上げる選択肢しかありません。また、1度繰上げをすると、繰上げ請求を取り消すことはできず、生涯、減額された年金額になるため、一般的にはできるだけ避けた方が良いでしょう。

繰下げ請求すると、毎月の受給額は増えますが、受給開始が遅くなる分、長生きしないと受給総額が少なくなります。68歳で繰り下げた場合は、79歳より長く生きた場合、受給総額が多くなります。

福地 健

ファイナンシャル・プランナー

社会保険労務士事務所 あおぞらコンサルティング顧問

(株)近代セールス社前代表取締役社長

CFP®(日本FP協会元理事)