中小運送会社に問う あなたの「運賃交渉」は間違っていないか? 70%以上が値上げ成功の今、失敗者の学びが問われている

AI要約

運送会社が運賃値上げの交渉に成功する割合が増加している。

公正取引委員会やトラックGメンの活動効果もあり、運賃交渉の成功率が向上している。

運送業界における運賃値上げ交渉はまだ改善の余地がある。

中小運送会社に問う あなたの「運賃交渉」は間違っていないか? 70%以上が値上げ成功の今、失敗者の学びが問われている

 運賃値上げの交渉に、一定の成果を得ることができた運送会社が増えている。

 国土交通省が行った「標準的な運賃に係る実態調査結果の概要」を見ると、2023年には、運賃値上げができた運送会社は63%だったが、2024年に行われた調査では

「75%」

まで増えた。価格交渉を実施した運送会社は69%(2023年)に対し、71%(2024年)となった。交渉を行った運送会社の割合がさほど変わらないのに、12%も運賃値上げができた運送会社が増えているのだ。

 ちなみに、先の「運賃値上げができた」割合は、

・一部収受できた

・希望額を収受できた

の合計値である。「一部収受できた」の割合は33%から36%と、3ポイントのアップにとどまるが、「希望額を収受できた」の割合は、30%から39%へと9ポイントもアップしている。

 これは、「物流の2024年問題」を始めとする、運送会社の苦境が広く世に知られたことに加え、公正取引委員会やトラックGメンなどが、買いたたきはもちろん、運賃交渉に応じないといった事例についても、積極的に荷主に対する取り締まりを行っている成果だろう。

 とはいえ、運送業界における運賃交渉は、まだ道半ばというべきだ。帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査(2024年2月)」によれば、全産業における価格転嫁率40.6%に対し、運輸・倉庫産業の価格転嫁率は27.8%と、農・林・水産業(23.8%)に次ぐ低位にある。この調査結果は、倉庫業も含んだ価格転嫁率ではあるが、それでも他産業との比較という点では参考になるだろう。

 運送会社による運賃値上げ交渉の結果が芳しくない理由は、いくつか考えられるのだが。筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は、そのひとつに、

・運送会社における交渉スキル不足

・交渉に臨む覚悟の欠如

があると考えている。

 これは、ある大手運送会社の所長(A所長とする)から聞いたエピソードである。A所長が、地方にある保有車両台数30台ほどの中小運送会社社長(B社長とする)に対し、

「社長のところ、運賃値上げの交渉はできていますか」

と尋ねたそうだ。すると、「全然ダメだ。相手にもしてもらえない」と答えたという。「『相手にしてもらえない』って、どういうことですか」と尋ねるA所長に、社長はこのように答えたという。

「先日も荷主に、『運賃を値上げしてください』って、電話でお願いはしたんだけどね」

A所長は驚いた。そこで重ねて質問をしたそうだ。

A所長「お願いをしたのは電話だけ? 直接荷主に会ってないのか」

B社長「会っていない。電話だけ」

A所長「書面は出したのか」

B社長「出していない。電話(口頭)で伝えただけ」

A所長「値上げ要望の具体的な金額は伝えたのか」

B社長「『2割位は値上げしてほしい』とは伝えた」

「これって運賃交渉でもなんでもない、ただの愚痴で世間話だよね」

A所長はあきれ果てたそうだ。