コンビニが「24時間営業」ではなくなる日…人口激減ニッポンの危機

AI要約

日本の人口減少は深刻な社会問題であり、その影響は様々な産業に及んでいる。コンビニエンスストアの店員不足や建築規制の見直しを通じて、人口減少が日本社会に与える影響が浮き彫りになっている。

地方から都市への人口流出が進み、特に人口減少が顕著な京都市では建築規制の緩和を検討するなど、都市計画において人口減少対策が急務となっている。

安倍政権も全世代型社会保障を掲げているが、人口減少対策はより包括的なアプローチが必要であり、将来的な日本社会の在り方についての議論が求められている。

コンビニが「24時間営業」ではなくなる日…人口激減ニッポンの危機

人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来の地図帳』は、20年後の日本人はどこに暮らしているのか?人口減少が「10年後、20年後の日本のどの地域を、いつごろ、どのような形で襲っていくのか?についての明らかにした書だ。

※本記事は『未来の地図帳』から抜粋・編集したものです。

「人口減少の深刻さを分かっていない」──そんな感想を抱く場面にたびたび遭遇する。

先ごろ痛感したのが、日本の小売り業を牽引しているコンビニエンスストアの24時間営業をめぐる一連のゴタゴタ劇だ。

最大手のセブン-イレブン・ジャパンのフランチャイズチェーン(FC)店において店員不足に悩んだFCオーナーが悲鳴を上げ、営業時間を自主的に短縮したことから始まり、社長交代にまで発展した。だが、足りなくなるのは、店員だけではない。総菜を作る人も、決められた時間に商品を納入するトラックの運転手もすべて人手不足になっていく。これが少子高齢化の現実なのである。

「24時間営業だからコンビニは成長した」という本社側の言い分は分からないでもない。しかし、何時に売れ筋商品を何個運ぶという徹底管理のビジネスモデルそのものが、地域によっては曲がり角に差し掛かっていることに気が付かなければならない。

市町村による定住人口の引っ張り合いも人口減少問題の解決にはならないが、世界的な観光都市の京都市までがこの引っ張り合いに参戦し始めたのだから驚く。人口の目減りに歯止めをかけるべく、建物の高さ規制を一部地域で緩和しようとしているのだ。

京都市が歴史的な街並みを守るとして新景観政策を導入したのは2007年のことであった。それを一転して見直そうとしているのは、子育て世帯などの市外への流出が拡大し、市内に住んで働く人が減ってきたことへの危機感からだ。

京都市の都市計画局の資料を見ると、京都市は対東京圏だけでなく、京都府南部の自治体や大阪府、滋賀県にも転出超過の状況が続いている。

しかも、その中心は20~30代だ。規制を見直すことで市内に住宅の供給を増やし、こうした流出を止めるとともに流入する住民を増やしたいとの思惑があるようだ。

子育て世帯などの流出の背景には、建物の高さを規制したことで自由にマンション建設が進んでこなかったことがある。

これに加えて、最近の訪日外国人観光客の急増に伴う中心市街地でのホテルの建設ラッシュや、高級住宅地の物件が民泊目的で高値で取り引きされたこともあり、地価が高騰した。

その余波で市内各地の物件に割高感が出て、一部地域では中古マンションでも高額で取り引きされているという。

こうなると、子育て世帯などが手頃な物件を求めて市外へ目が向くようになるのも当然だ。よそから京都市内に移り住もうとする人にも手が届きづらくなる。

高さ規制は手頃な住宅の建設が進んでこなかっただけでなく、オフィス不足も加速させている。職場も増えず、結果として人口が減る要因となっていく。

こうした状況に京都市幹部が危機感を抱く事情は分からないでもない。一時的には人口流出に歯止めがかかるかもしれない。だが、規制を緩和して京都市内に高層ビルやマンションが立ち並ぶようになったならば、「千年の都」の魅力は大きく損なわれるであろう。

むしろ、日本全体で人口が減るのだから、いずれ京都市も人口が減ることはやむを得ないと考えるべきだ。日本全体の減少スピードを考えれば、市区町村による“住民の綱引き”に勝者はいない。

京都は誰もが認める世界の財産なのだから、人口の奪い合いにいたずらに参戦するよりも、ヨーロッパの古都と同じく、都市としてのアイデンティティの維持にエネルギーを傾けたほうが、長期的には魅力ある街として残ることだろう。

安倍晋三首相も相変わらずだ。少子高齢化対策の中身はといえば、いつもながらの教育無償化を強調し、「社会保障制度を子供から子育て世代、現役世代、高齢者まですべての世代が安心できるものへと改革していく」というものである。全世代型社会保障が重要な政策であることは否定しないが、社会保障改革は人口減少対策の一部に過ぎない。

残念なことではあるが、過去の少子化のツケでこれから出産期に入る若い女性がハイペースで減っていくため、当分の間、出生数は下げ止まらない。人口減少社会は年々酷くなっていくことは避けられない“現実”なのである。少子高齢化が進んでしまったいま、「全世代型」と言っている段階にはなく、人口減少対策としてはいかにももどかしい。

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。