上海の日系老舗百貨店「梅龍鎮伊勢丹」が営業終了 27年の歴史に幕、消費者の百貨店離れに抗えず

AI要約

梅龍鎮伊勢丹は27年間の歴史に幕を閉じ、中国の小売業界の変化が背景にある。

三越伊勢丹グループは中国での店舗を次々と閉鎖し、天津市の1店舗のみを残すこととなった。

中国の小売業界では長らく百貨店の衰退が議論されており、消費者ニーズの多様化が要因とされている。

上海の日系老舗百貨店「梅龍鎮伊勢丹」が営業終了 27年の歴史に幕、消費者の百貨店離れに抗えず

 2024年6月30日、上海市の日系老舗百貨店「上海梅龍鎮伊勢丹」が営業を終了し、27年間の歴史に幕を下ろした。

 1997年6月にオープンした梅龍鎮伊勢丹は、日本の三越伊勢丹グループが中国企業などとの合弁により、上海有数の目抜き通りである南京西路に面した複合商業ビルのキーテナントとして出店した。

 当時は中国の小売業の市場が外国企業に開放されたばかりで、香港の「新世界百貨」や台湾の「太平洋百貨」、マレーシアの「パークソン百貨」などの外資系百貨店が続々と中国に進出していた。

■天津の1店舗を残すのみに

 梅龍鎮伊勢丹の営業終了の理由は、表向きには「契約期間の満了」だ。同店を運営する合弁会社は3月25日、株主間の合弁契約および店舗の賃貸契約が期限を迎えるとして、6月末で閉店する旨を取引先に通知していた。

 とはいえ現実には、中国の小売業界の構造や消費者ニーズが大きく変化した中で、百貨店の経営が厳しさを増していることが背景と見られている。

 三越伊勢丹グループは、最盛期には中国で伊勢丹ブランドの百貨店を6店舗運営していた。しかし2022年に四川省成都市の2店舗を閉店し、2024年4月には天津市の2店舗の営業を終了。それに続く梅龍鎮伊勢丹の閉店で、中国の店舗は天津市の「仁恒伊勢丹」を残すのみとなった。

 上海梅龍鎮伊勢丹の営業終了をきっかけに、中国のSNS(社交サイト)上では「外資系百貨店の相次ぐ撤退」が改めて話題になった。しかし中国の小売業界内では、百貨店の衰退は(外資系か地場系かにかかわらず)10年近く前から語られ続けてきたテーマだ。

 中国の商業施設の歴史を振り返ると、その発展の初期段階においては、豊富な品揃えを売り物にする百貨店が当時の消費者ニーズに合致していた。

 だが、時代の流れとともに消費者ニーズはどんどん多様化した。そんな中、相対的に狭いスペースに商品が詰め込まれた百貨店は、(ゆったりした空間に物販だけでなく飲食や娯楽サービスなどを組み合わせた大型ショッピングモールなどに押されて)次第に消費者の支持を失っていった。