【試乗】電動化してもアルファはアルファ! 賛否両論の「顔」も意外にアリ! 改名騒動で話題のアルファロメオ・ジュニアはファンを裏切らない走りだった

AI要約

アルファロメオは新型車のデビューについて、常に論争の的となるが、時間の経過と共にモデルの価値が認められることが多い。

最新のミラノと呼ばれるモデルも最初は否定的な意見が多かったが、実車を見るとスタイリングの魅力が感じられる。

インテリアは伝統的でコンサバだが、アルファロメオらしい独自のデザインが随所に見られる。

【試乗】電動化してもアルファはアルファ! 賛否両論の「顔」も意外にアリ! 改名騒動で話題のアルファロメオ・ジュニアはファンを裏切らない走りだった

 アルファロメオって幸せなブランドだよな……と感じるのは、ニューモデルがデビューすると必ずクルマ好きの間で大きな話題になるからだ。もちろんほかのブランドのニューモデルだって話題にはなるが、アルファの場合は頭ひとつ飛び出しているように感じられる。とりわけSNSの時代となってからは、写真とニュースで知った新型の良し悪しについての議論を、かなり頻繁に見かけるようになった。

 そして、アルファって幸せなことなのかそうじゃないのか、たぶん幸せなことなのだろうけど、大抵の場合その議論の初期段階では、否定的だったりする。アルファ愛が狂人だったり自分の好きなモデルへのこだわりが強かったりして、新しいモノをスッと受け入れることができない傾向があるからだ。

 けれど、これはアルファにとって幸せなこと、というよりアルファロメオの歴代デザイナーの実力というべきなのだろうが、そうしたモデルたちも時間の経過とともに“今いまになって見ると結構いいよね”みたいに、次第に認められるようになることがほとんどだ。たとえば “醜いジュリア”と呼ばれた初代のジュリア・ベルリーナや“イル・モストロ(=怪物)”とニックネームされた2代目SZなどは、いまでは歴史的な名車と呼ばれている。

 今年の4月に“ミラノ”という名前でデビューしたこの“ジュニア”も、当初は散々ないわれようだった。写真や動画で見るスタイリングが、まるで長い歴史の流れをブツッと断ち切ったかのような挑戦的に感じられるモノだったこと。そして、ラインアップがバッテリーEVをメインとしたMHEVとの2本立てになったこと。そのふたつを嘆く声をずいぶんと耳にしたし目にもした。それも世界中で、だ。

 アルファロメオのファンに多い純内燃エンジンのクルマがラインアップにないのは時代の流れ、それは仕方のないことだと思う。アルファがモーター駆動であってもドライビングプレジャーの大きいクルマを作ることはトナーレで確認できているから、ちょっとした期待感もあった。ただし、スタイリングデザインに関しては、嘆く気もちがわからないでもない。ボク自身も最初に写真で見たときに、軽く戸惑ったからだ。

 けれど、実車はなかなか悪くなかった。パッと見て思わず “写真で見るよりカッコいいじゃん”とクチにしたくらいだ。美醜でいうなら、まぁたしかに美ではない。でも、何だか目が惹き付けられちゃう吸引力がある。姉にあたるステルヴィオやトナーレのフォルムを継承しつつ進化させたようなその姿は、低いルーフと豊かなフェンダー、フロントからリヤにかけてを滑らかに上下しながらつなぐショルダーラインなどで構成されていて、何だかスポーティなハッチバックのよう。見る角度によっては、日本の環境にもちょうどいいジュリエッタよりほんのわずかであっても全長と全幅が小さいとは思えないほどグラマラスに感じられる。

 ほとんど糾弾に近いくらいのいわれようすらされていたフロントのスクデット(=盾の部分)も、意外やそう悪くはなかった。アルファロメオの紋章のなかにも刻まれる大きな十字とビシォーネが透かし彫りのようになった新しい意匠のスクデットは、“プログレッソ”と呼ばれる高性能モデルと上級仕様のためのもの。おそらくアルファロメオが獲得を狙っている、若く新しいユーザー層に向けたアプローチなのだろうが、それが古くからの熱心なファンには違和感となったのだろう。発表のときには照明などで故意に浮き立たせていたのか、自然光の下で見た実物はブラックの色調や光沢感が巧みに抑えられている感じで、思いのほかすんなり受けとめることができた。

 おまけにしばらくクルマを眺めていたら、“結構カッコいいじゃん”という気もちがジワジワ膨らんでくる。2代目SZが発表されたあとも、そんな感じだった。アルファロメオはどういう魔術を使っているのだろう……?

 一方でインテリアは、コンサバといえばコンサバだ。ただし、アルファロメオならではの、という但し書きがつく。2眼に盛り上がるメーターナセルは、初代ジュリアの1750GTVあたりの時代に生まれたトラディショナルな意匠。156の時代以降は、ほとんどのモデルに採用されている。無駄な派手さや奇をてらったようなところがひとつもないのも、アルファロメオの公式だ。

 インフォティメントシステム用の10.25インチ・タッチモニターがコンソールの内側にレイアウトされるのは新しいが、雰囲気としてはステルヴィオやトナーレの流れを汲んだものといえるだろう。装備類に不足はなく、使われているマテリアルにも安っぽさはなく、全体的にBセグメントSUVとしてはプレミアム感の高い仕立てになっていると思う。