〈年金470万円、退職金4,000万円〉2人とも大企業の60代・社内結婚夫婦、老後も絶対盤石のはずが…定年後、夫だけ「幸せです。」と語るワケ【FPが解説】

AI要約

夫婦の心の溝が明らかになる定年退職の転機。A夫婦の事例を通じて考察。

A夫婦は会社の社内結婚。60歳まで働いた場合、年金や退職金でゆとりある生活が見込める。

しかし、妻の子供を持たない意向や家事の負担などをきっかけに徐々に違和感が募る。

〈年金470万円、退職金4,000万円〉2人とも大企業の60代・社内結婚夫婦、老後も絶対盤石のはずが…定年後、夫だけ「幸せです。」と語るワケ【FPが解説】

長年連れ添った夫婦であっても、お互いの心の内を明かせずにいると、「定年退職」は2人の転機となることも。本記事では同じ大企業に勤めていたAさん夫婦の事例とともに、パワーカップルの老後について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

Aさん夫婦は同じ企業に勤め社内結婚したカップルです。Aさん夫婦の会社では、社内結婚しても部署が同じになることはありませんが、同じ事業所で働くことができます。転勤もありますが、Aさんたちのように社内結婚の場合、夫婦が別居することのないよう配慮してくれることから、長く仕事を続けられる環境です。60歳まで仕事を続けた年金額は以下の図表のとおりです。

 

※老齢基礎年金は2024年度新規裁定者の満額。老齢厚生年金は差額加算を考慮せず。Aさん夫婦の平均標準報酬月額はAさん62万円、456月と妻59万円、480月で計算。

2人合わせての年金は470万円超えで、月額にすると約40万円受け取れます。退職金も2人で4,000万円。老後は盤石でゆとりある生活を送れそうですが……。

Aさん夫婦は高校時代の同級生です。大人しい性格のAさんと勝気な妻は、学生のころ友人から「2人が結婚したら、世話焼き女房になりそうだな」「まったく違う性格なのに仲がいいね」と冷やかされることもありました。進学先は、Aさんは4年制大学、妻は短期大学と離れたため、一度は連絡も途絶えました。しかし、偶然同じ会社に就職したため、再会を果たすこととなりました。

世話焼き女房的な妻と再会し、気心しれた友人から恋人になり、夫婦となりました。次第に社内では「おしどり夫婦」と呼ばれるように。対外的にはおしどり夫婦でしたが、実際それは仮の姿だったようです。

Aさん夫婦は、転勤族だったこともあり持ち家は購入せず、通勤に便利な都内の3LDKの賃貸マンションで生活しています。結婚当初は子どもを望んでいた2人ですが、妻は仕事と両立ができないからと、Dinks(共働き+子どもを持たない)でいることを望むようになりました。Aさんは「納得いかない、協力するから」と必死に何度も説得しましたが、取り付く島もなく、結局自分の気持を表に出すことが苦手なAさんは妻の意向に従うかたちに。このころからAさんはなんとなく違和感を覚えます。

さらに結婚生活が始まったころは、交代で家事をこなしていましたが、妻は家事が大の苦手だったのです。3LDKのマンションは、それぞれが1部屋を使っていましたが、妻の部屋は物が溢れ整理整頓されていません。会社での妻からは想像しがたい有り様です。会社での妻はテキパキと仕事をこなすキャリアウーマン。人事評価も高いのです。Aさんは大人しい性格ですが、仕事はそつなくこなし、周りからは仲良しパワーカップルで羨ましい、ともてはやされていました。