日本産ホタテ、米高級市場に照準 中国の禁輸受け、メキシコで加工

AI要約

日本産ホタテが中国の禁輸措置によって輸出先を失い、新たな戦略として米国市場へのアプローチが模索されている。

中国による禁輸措置は日本産ホタテの供給網を一挙に崩し、中国依存から脱却するためにメキシコを経由して米国市場を目指す動きが進んでいる。

日本産ホタテの主要輸出先であった中国向けに輸出量が大きく落ち込み、米国への新しい販売戦略が模索されている。

日本産ホタテ、米高級市場に照準 中国の禁輸受け、メキシコで加工

住井 亨介

中国が日本産水産物を全面禁輸したことで輸出先を失ったホタテ。日本の水産業者などは、新たにメキシコ経由で米国の高級市場を狙う戦略を描いている。

中国による禁輸措置は、中国国内の消費市場向けだけでなく、中国で加工し、再輸出される日本産ホタテの供給網を一挙に崩した。中国依存から脱却するため、メキシコで加工し、米国の高級食材市場へ売り込む試みが進んでいる。

中国政府は2023年8月、東京電力福島第1原発からの処理水放出に態度を硬化させ、日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。中でも中国を最大輸出先としていたホタテへの打撃は大きかった。

23年の中国向け輸出額は前年比44.6%減の258億7800万円、輸出量は同47.7%減の5万3700トンに大きく落ち込んだ。これに引きずられて、中国を含む世界全体へのホタテの輸出額は同24.4%減、輸出量は同36.6%減となった。

中国に輸出される日本産ホタテは、主に米国市場向けだった。人件費を抑えられる中国へ冷凍して輸出し、殻をむいた貝柱を再冷凍して米国に輸出してきた。衛生管理の規制によって、米国へは二枚貝を直接輸出できないためだが、貝柱の取り出し、再冷凍などの加工処理は、「原産国を変える実質的変更とはみなされない」という米税関・国境警備局(CBP)の見解で、「日本産」と表示されてきた。

こうした背景から、ホタテ加工の中国依存は深まってきた。輸出量の8割が中国向けとなったサプライチェーンは効率的ではあったものの、リスクヘッジの視点が欠け、禁輸措置によって一気に崩れてしまった。

ホタテ加工の代替地として日本貿易振興機構(JETRO)が目を付けたのが、最終消費地・米国に隣接するメキシコの北西部バハカリフォルニア州エンセナダだった。米カリフォルニア州と接する国境の都市ティフアナから南へ100キロに位置し、メキシコでも指折りの水産物加工企業が集積する。周辺ではカキやアワビ、ムール貝などの養殖業が盛んで、殻むきに熟練した作業員が多い。エンセナダ産シーフードが米国で高く評価されていることも大きかった。