ビジネスをグッと動かすのは、トレンドより基本。ファミリーマートが変えたこと、変えなかったこと

AI要約

ファミリーマートのエグゼクティブ・ディレクターである足立光氏が、マーケティングの重要性と顧客理解に焦点を当てた基調講演を行った。

ファミリーマートが成功する秘訣として、ターゲットのキープ、商品数やキャンペーン数の維持、お得なポジショニングを継続することを挙げた。

特に「たのしいおトク」な商品提供と面白おかしいコミュニケーションがファミリーマートの強みであり、成功の要因として紹介された。

マーケターにとって、サードパーティCookieが失われるまでの残された時間は、単なる代替手段を探すための猶予か、あるいは「顧客の信頼を得る、より良きコミュニケーション」を再考するための時間かーー。DIGIDAYが7月8日に都内で開催した「DIGIDAY POST COOKIE FORUM」は、Cookieレス時代を見据え(※Googleは同イベント後の米国時間7月22日に「ChromeからサードパーティCookieを廃止することを断念した」と発表)、顧客理解の本質的な価値やそれに基づくコミュニケーションのあり方を改めて問う場となった。

そのトップバッターとして登壇したのが、コンビニ業界の常識を覆す数々のヒット商品や企画を生み出し、快進撃を続けるファミリーマートのエグゼクティブ・ディレクターCMO兼CCRO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)の足立光氏だ。足立氏は、マーケティングを「商売」と位置づけており、同氏がリードするファミリーマートの革新の裏側には、顧客視点であるという軸をぶらさず、コミュニケーションの基本である「WHO・WHAT・HOW」に忠実に向き合う戦略が見えた。基調講演「コンビニが変わる、流通マーケティングが変わる。足立光エグゼクティブ・ディレクターCMO・CCROとファミリーマートの3年間」をレポートする。

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P&Gジャパンを皮切りに、戦略系コンサルティングファームやシュワルツコフヘンケル、日本マクドナルド、ナイアンティック……と、名だたる企業でマーケティング、再建などを担ってきた足立氏は、トップマーケーターであり、再建請負人でもある。そんな同氏がファミリーマートのCMOに就任したのは、2020年10月のこと。今年3月からはCCROも兼務することとなり、新規事業やデジタル事業も統括しているという。

そのファミリーマートが、とにかく好調だ。既存店日商が34カ月連続(2024年6月)でプラス成長を記録しただけでなく、「商品のおいしさ」「コストパフォーマンスの良さ」のイメージスコアも右肩上がりなのだ。コンビニ業界ナンバー2になってからも、成長し続ける理由について、足立氏は「何を変えて、何を変えなかったのか」というポイントを挙げた。

「ちょっとおトク」を継続的に訴求している

まず変えなかったことは、「ターゲット」「新商品・キャンペーン数」「ポジショニング」の3つ。ターゲットはコアセグメント(20~50代の男性)が現在の売上の約半分を占めていたことから、強化セグメント(30~50代の女性とシニア)も含め、キープすることに。そして、多数の新商品を出しても売上・客数に大きく影響しないと過去のデータで証明されていたので、新商品やキャンペーンの数も据え置きとした。ただし、数が多く「見える」工夫はしているという(後述)。

特徴や強みを示すポジショニングについて、ファミリーマートは競合と比較すると、若干量が多いなど、「ちょっとお得」な商品を提供している。また、業界トップの会社が「クラスの優等生」だとしたら、ファミリーマートは「クラスの人気者」であり、どこか「面白おかしい」イメージだ。足立氏は当時のファミリーマートの中心メンバーとともに、これらの特徴を5つのキーワード(①もっと美味しく②たのしいおトク③「あなた」のうれしい④食の安全・安心、地球にもやさしい⑤わくわく働けるお店)として再定義した。

「なかでも②たのしいおトクは、高付加価値・高単価を追求している他社にはないファミリーマートの特徴であり、強みでもある。ちょっとお得なイメージを印象づけるため、『40%増量作戦』や『1個買うと1個もらえる』など、おトク系のキャンペーンを連続的に実施して、キャンペーンビジュアルはすべて、『クラスの人気者』らしく、面白おかしいコミュニケーション・トーンに統一した」(足立氏、以下同)。

「ファミチキ先輩」という従来からあるキャラクターも、この面白おかしい文脈に合うため、現在でもときどき登場させている。