なんと約50%が「無人駅」という現実! このまま地域崩壊か、駅舎活用のチャンスか? そもそも“性善説”で使わせて大丈夫なのかという治安懸念も

AI要約

国土交通省のデータによると、全国の駅の約半数が無人駅であり、その割合は今後も減少せず増加している。JR九州を含め、地域で無人駅が増加している中、無人化された駅を活用する可能性が広がっている。

無人化された駅を地域のコミュニティースペースとして活用する取り組みが増えており、地域住民やUターン・Iターン者の交流拠点として機能している。無人駅を活用することで地域の力を昇華させる“基地”としての役割が注目されている。

一度廃止された無人駅でも、地域活性化のために再利用されており、地元住民や学校との連携イベントが開催されるなど、地域の価値と満足度を高める取り組みが行われている。

なんと約50%が「無人駅」という現実! このまま地域崩壊か、駅舎活用のチャンスか? そもそも“性善説”で使わせて大丈夫なのかという治安懸念も

 皆さんの近所にも無人駅が増えているのではないだろうか――。

 国土交通省のデータによると、2001(平成13)年度には全国9514駅中、無人駅は「4120駅(43.3%)」だった。しかし、2019年度には全国9465駅中、無人駅は

「4560駅」(48.2%)

にまで増えている。

 駅数そのものはあまり変わっていないが、無人駅が急増しているのだ(国土交通省の鉄道各社年度末駅数・無人駅数集計による)。

 つまり、全国の駅の50%が無人化されており、その割合は経営合理化によって今後も減少する見込みはない。コロナ禍で定期券利用者も減少傾向にある。

 こうした流れのなか、JR九州は2022年3月以降、21駅を無人化。一部地域で増加傾向が顕著である。

 無人駅には、

・もともと無人だった駅

・有人駅を無人化した駅

がある。最近では、時間帯によって有人・無人を切り替える駅も増えている。前述のデータにこのような駅を含めると、日本には相当数の無人駅が存在することになる。

 ただ、有人駅を無人化した駅には“可能性”がある。なぜなら、駅員室や切符販売室などを有効活用し、地域住民同士をつなぐ

「居場所」

を作ることで、コミュニティーの維持・強化を図れるからだ。

 筆者(北條慶太、交通経済ライター)は2017年2月、三江(さんこう)線の川戸駅(島根県江津市。三江線の廃止にともない2018年4月廃駅)を訪れた。駅は無人駅だったが、駅舎の空き部屋を活用して地域活性化に取り組むNPOの人たちがいた。無人駅を地域住民の交流の場としてだけでなく、

・Uターン(地方で生まれ育った人が都心で一度働き、また地元に戻って働くこと)

・Iターン(生まれ育った故郷以外の地域で働いたり、移住したりすること)

の拠点としても活用していることがわかった。

 そこには、地元の老若男女が集まり、人のいない寂しい田舎ではなく、「楽しさと価値のある田舎」に高めようとしていた。無人駅は

・地元の人

・Uターン者

・Iターン者

の交差点となり、さまざまな人の力の相乗効果で地域の力を昇華させる“基地”として有効に活用されていた。地域全体が持つ経営資源を最大限に活用し、地域の価値と満足度を高める「地域経営」という言葉が再び流行しているが、彼らはまさにそれを実践していたのである。

 訪問当日の夜、駅舎では地元の老若男女、Uターン者、Iターン者が集まり、食べきれないほどの手料理を囲んでの交流会が開かれた。このような会は、都会から来た人たちが地元の人たちとすぐに打ち解けられるよい機会であり、しかも無人駅で開催されたことがとてもユニークだった。無人駅そのものと、にぎやかな雰囲気のなかで駅と人をワイワイガヤガヤつなげようという試みが、とてもうまく融合していた。

 前述のとおり、三江線は筆者の訪問後、乗降客数の低迷で廃止を余儀なくされたが、駅舎は廃止後も残り、地域住民が歓談するコミュニティースペースとして活用された。2021年、江津工業高校と地元住民が、子どもたちがレールバイクで線路を走り、駅をライトアップするイベントを開催した。

 当時、筆者は川戸駅訪問の一環として、芸備線の狩留家駅(かるがえき、広島県広島市)も訪れた。昔ながらの駅舎は1949(昭和24)年1月に改築されたもので、無人駅だった。駅事務室は高齢者交流施設「夢かるが」として利用されている。高齢者が集い、談笑やゲームなどの交流を楽しむ「居場所」となっている。