日本が誇る「ジブリブランド」で一気に世界市場へ…100億円の大型買収を決断した日本テレビの"3つの狙い"
日本テレビホールディングスは2023年9月、100億円をかけてスタジオジブリを子会社化した。
日テレはジブリ作品の世界配信を皮切りに、日本のアニメを核としたグローバルビジネスを加速することを目指している。
この大型M&Aは日本のメディア業界における再編の一環であり、日テレのコンテンツ資産の獲得やアニメ事業の強化を示している。
日本のメディア企業は地上波だけでなくインターネットなどあらゆるメディアを活用し、コンテンツの力で勝負する時代に突入している。
日本テレビは自社のコンテンツ制作力を最大限に活用し、テレビの枠を超えた展開を図っている。
高品質な映像作品を生み出すIPホルダーとして、日テレは新たな展開を模索している。
日本テレビの大型M&Aが示すものは、メディア企業の変革と未来像だけでなく、中小企業が取るべき戦略にも影響を与えている。
自社の強みを再定義し、パートナーシップを結ぶことで新たな価値を生み出すことが求められる状況下である。
日本テレビホールディングスは2023年9月、100億円をかけてアニメ映画製作のスタジオジブリを子会社化した。事業承継・M&Aを行うテイクコンサルティング代表の松丸史郎さんは「最高のコンテンツを獲得した日テレはジブリ作品の世界配信を皮切りに、日本のアニメを核としたグローバルビジネスを加速していくだろう」という――。
※本稿は、松丸史郎『元銀行員×経営者が教える 幸せになるための事業承継とM&A』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■大型M&Aが映し出す日テレの未来
日本のメディア業界の再編の一つ、日本テレビ放送網のスタジオジブリ買収。この大型M&Aには、日テレの明確な戦略的意図が込められていました。
コンテンツ資産の獲得、アニメ事業の強化、グローバル展開の加速……。
その狙いを紐解くことで見えてくるのは、変革の時代を勝ち抜くメディア企業の未来像です。
さらに、この提携が示唆するのは、日本の中小企業が生き残りをかけて取り組むべき戦略。自社の強みを再定義し、パートナーとの協働で新たな価値を生み出す。時代の荒波を乗り越えるためのヒントが、ここにあります。
今回、私が関係者からの聞き取りと公になっている情報をもとに、日テレの目指す未来を考察してみたいと思います。
■地上波だけで生きていける時代は終わった
かつてのテレビ局は、地上波という唯一無二のメディアを舞台に、圧倒的な影響力を誇っていました。しかしインターネットの登場によって、そのパラダイムは大きく変わりました。
そんな時代にあって、日本テレビが進むべき道は明確でした。
「地上波の枠を超えて、コンテンツの力で勝負する」
この一念が、同社の事業領域拡大の原動力になっているのです。
日本テレビは2010年代より、自社の強みである「コンテンツ制作力」を最大限に活用し、テレビに限らないあらゆるメディア、あらゆるデバイスで受け手と向き合うことを重視しています。
つまり、高品質な映像作品を生み出すIP(Intellectual Property:知的財産)ホルダーとしての立ち位置を最大限に活かしながら、テレビの枠を超えた展開を図っていくのです。