紅麹で健康被害ガバナンスの優等生といわれた「小林製薬」見せかけの企業改革

AI要約

小林製薬の紅麹問題に関連して、死亡者数が急増しているが、原因は確定していない。

厚生労働省と小林製薬の対応について激しい非難が起きており、原因究明が急務となっている。

工場での衛生管理に問題がある可能性があり、GMP認定を受けていない点が指摘されている。

紅麹で健康被害ガバナンスの優等生といわれた「小林製薬」見せかけの企業改革

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 収束の兆しが見えない小林製薬の紅麹問題。3月22日に「紅麹コレステヘルプ」など紅麹関連商品の回収を発表して以降、健康被害の報告が相次いでいる。

 原因究明を急ぐが、健康被害との因果関係は現状確定していない。

 3月末以降、関連の疑われる死亡者数を5件と公表してきた小林製薬。6月28日には「報告基準の変更」を理由に新たに76件を追加した。

 これまでの調査では、腎関連疾患による死亡例に限定してきたが、紅麹関連商品が体力減耗など別の症状を引き起こす可能性が浮上した。腎関連疾患によらない死亡例も報告対象に含めたことで、件数が急増した。

■厚労相が激しく非難

 この間、厚生労働省に対して死亡数に関する説明や進捗報告はいっさいなかったという。武見敬三厚労相は「小林製薬の判断で、死亡者数の報告をしなかったことは極めて遺憾だ」と激しく非難した。

 「もう小林製薬だけに任せておくわけにはいかない。厚生労働省が直接調査計画を立てさせ、進捗状況を管理する」(武見厚労相)

 原因究明に重要なのが、紅麹原料を製造していた工場の実態だ。

 小林製薬は2016年、繊維メーカーのグンゼから紅麹事業を譲り受けた。その後、大阪工場(大阪府大阪市)で紅麹原料を製造してきたが、23年12月、老朽化などを理由に同工場を閉鎖。24年1月以降はグループ会社の工場(和歌山県紀の川市)に設備を移設して製造を続けてきた。

■両工場内で同種類の青カビ検出

 3月末の厚労省などの立ち入り検査で、両工場内で同じ種類の青カビが検出された。この青カビが混入し、「プベルル酸」という物質が発生した可能性があるという。動物実験の結果、プベルル酸は腎障害を引き起こすことが判明。ほかにも青カビが紅麹菌と共培養されることで生成される別の2つの化合物も確認されている。

 工場の衛生管理は十分だったのだろうか。サプリメントに関しては、医薬品の製造・品質の管理基準であるGMP(適正製造規範)認定を受けることが推奨されている。しかし、これを強制する制度はなく、事業者の自主性に委ねられている。小林製薬の大阪工場ではGMP認定を取得しておらず、社内のガイドラインなどに基づき検査を行うにとどまっていた。